もし最初の配役どおりに吳彦祖だったら・・・・かなり肌触りの違う作品になっていたんでは?
そう思わせるのは古天樂と余文樂の賢兄愚弟という役柄が実にぴたりとハマっているからで、二人のベスト演技といっても言い過ぎではないと。
驚いたのが凶暴な台湾ヤクザを圧倒的な存在感で演じた張孝全! 凶悪さと繊細な情感を同時に演じるという見事な悪役ぶりは主役の香港人俳優と同等以上の役者っぷり。
なかでもジャック・カオの埋葬シーンは男泣きの名場面で堪りません。
ラスト、セントラル遮打花園に追いつめられた張孝全が”さぁ、殺せ!”と古天樂と対峙するシーンは近年にない屈指のヒリヒリするような熱い場面です。
こんな強烈な個性の悪役は最近の香港映画ではいなかったのでは? これはもう「フルコンタクト(俠盗高飛)」でのゲイギャングを演じたサイモン・ヤム以来と言い切っていいかもしれません。
それにしても意味もなく揺らしたり、廻り込んだり、無駄なクレーンショットを多用する近頃の動作片と違い、オーソドックスなカメラが嬉しい仕上がりです(古天樂の低い声を評価するワタシとしては、彼のモノローグで始まり、モノローグで終るという構成は実に結構でした)。
こうなると張孝全が出演する次作「天火」にはさらなる期待が高まります。

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