香港郊野遊行・續集

香港のハイキングコース、街歩きのメモです。

「ロシアの勝利を許すこと、中国に危険なシグナル」フィンランド識者(朝日新聞有料記事)

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 ロシアのウクライナ侵攻を巡るトランプ米政権の和平工作が難航しています。フィンランドの地政学アナリストで、ウクライナの英字紙キーウ・ポストに定期的に寄稿しているジョニ・アスコラ氏は「西側諸国の圧力は、ウクライナを衛星国に変えるというロシアの戦略的目標を変えるほど強くない」と語ります。

 ――ウクライナの戦況をどうみていますか。

 戦術的には、ウクライナは深刻な課題に直面しています。歩兵が不足し、ロシアのゆっくりですが粘り強い進撃を止めるのが難しい状況です。ロシアは、めぼしい成果がなく、コストが高くついても戦争を継続できると思います。

 戦略的には、ウクライナの方が強い立場にあります。全面侵攻からほぼ4年が経ちましたが、ロシアは依然として(ウクライナ東部のドネツク州、ルハンスク州からなる)ドンバス地域を巡って戦い続けています。「ウクライナを衛星国に変える」という(開戦当初の)2022年2月の戦略目標から遠ざかっています。

 ――今後の展開をどうみますか。

 戦争は今後、前線の戦果よりも(ロシアとウクライナ)両陣営の(国境から離れた場所に対する)深い打撃作戦に左右されるでしょう。別の都市を奪取するよりも、相手の経済を混乱させる能力の方が重要です。

 この戦争はロシアにとって戦略的な失敗になっています。プーチンに立ち止まる余裕がないため、戦争は終わっていません。一方、ウクライナは大きな被害を受けています。両陣営が長距離攻撃を強化する中で状況は依然として困難なままです。

 ――ロシアは全ドネツク州を占領できますか。

【連載】読み解く 世界の安保危機

ウクライナにとどまらず、パレスチナ情勢や台湾、北朝鮮、サイバー空間、地球規模の気候変動と世界各地で安全保障が揺れています。現場で何が起き、私たちの生活にどう影響するのか。のべ420人以上の国内外の識者へのインタビューを連載でお届けします。

ロシアによるドネツク全体の占領「莫大な犠牲伴う」

 ウクライナが現在抱えている人員と補給の問題が著しく悪化せずに安定すれば、ロシアはドネツク州全体を制圧するために莫大(ばくだい)な犠牲を払わなければならないと思います。(ロシアが制圧を発表した同州の戦略的要衝)ポクロウスクの占領には1年以上かかり、(さらに北方にある)スラビャンスクとクラマトルスクの占領はさらに困難になるでしょう。

 もしロシアが数十万人の兵士を失い、場合によっては最大100万人の死傷者を出し、さらに1年から3年を費やす覚悟があれば、(ドネツク州全体の占領に)成功するかもしれません。

 しかし、代償は途方もないもので、ロシアもウクライナも数年にわたる攻撃の激化や人的損失の負担に耐えられるのか、はっきりしません。

 ――ウクライナ軍のロシア領へのミサイル・ドローン(無人機)攻撃は効果をあげていますか。

 ウクライナ国内ではドローン生産が急拡大し、巡航ミサイルも定期的に攻撃に使えるほどの量を生産しています。しかし、ロシアを弱体化させるにはまだ不十分で、はるかに多くのドローンとミサイルが必要です。

 ――トランプ米政権は和平案を提示しました。

 トランプ政権の最初の28項目案は基本的にモスクワで作られ、ウクライナが受け入れられない条項が含まれていました。どんな最終合意も、被害者のウクライナにとって不公平なものになるでしょうが、「クレムリンの要求リスト」のように読めるものよりも、はるかにバランスの取れたものでなければなりません。

「西側はモスクワの計算を変える十分な圧力かけていない」

 ――ロシアは、ウクライナや欧州の修正案を拒否しました。

 ウクライナ・欧州案は、トランプ政権の当初案より、はるかにバランスが取れています。

 ロシアが提案を拒否したのは、核心的な戦争目的を損なうからです。妥協すれば戦略的目標の達成に失敗します。西側はモスクワの計算を変えるだけの十分な圧力をかけていません。

 ――ウクライナのイエルマーク大統領府長官が辞任しました。

 現在の汚職スキャンダルは深刻です。ゼレンスキー大統領と彼のチームに直接影響を及ぼしています。ゼレンスキー政権に対する国民の信頼低下は、重要な局面でウクライナを弱体化させます。

 ゼレンスキー氏は厳しい視線を浴びていますが、それでも多くのウクライナ人は彼を戦時指導者とみなしています。必要に応じて彼を批判しますが、戦争が終わるまでは彼の指導力を信頼し続けるでしょう。腐敗に対する不満を抱きながらも、彼の粘り強さと対話の姿勢を評価していると思います。

ウクライナは「緊急の軍事・財政支援を必要としている」

 ――ウクライナに必要な支援は何ですか。

 ウクライナは緊急の軍事・財政支援を必要としています。ロシアの凍結資産をウクライナの資産に移すことが優先事項であるべきです。さらに、防空システムの増強、ドローンやミサイルの国内生産拡大のための予算拡大、すべての重要な軍装備の継続的な支給が求められています。

 ――ロシアが勝利すれば、中国が台湾に侵攻する可能性が高まるという指摘があります。

 その見方は正しいと思います。ロシアの勝利を許すことは、ロシアの最大の支援者である中国に危険なシグナルを送ることになります。

 率直に言って、西側はすでに弱いシグナルを(中国に)送っています。ウクライナへの支援が依然、不十分ですし、米国のアジアを重視する方針への転換は中途半端です。トランプ政権と同盟国との対立は、(中国への)抑止力をさらに弱めています。強さは攻撃を抑止し、弱さは攻撃を招くでしょう。 

「国境事件」(Border Incident、1949年)

『国境事件』は、リカルド・モンタルバン、ジョージ・マーフィー、ハワード・ダ・シルバ主演の1949年公開のアメリカのフィルム・ノワール。アンソニー・マン監督、MGMプロダクションは、ジョン・C・ヒギンズとジョージ・ザッカーマンの原案に基づき、ジョン・C・ヒギンズが脚本を担当。撮影監督はジョン・アルトンで、低予算にもかかわらず、観客を魅了するために影と照明効果を巧みに利用しました。

 




この映画は、ドーリ・シャリー体制下のMGMで制作された低予算映画の数本のうちの一つだった。

マンによると、「MGM側は『好きな映画を作ればいい』と言っていた。ジョン・アルトンと私は『ボーダー・インシデント』を撮ろうと思っていた。というのも、MGMのスタッフは連邦捜査官やTメンとも関わっていたからだ。Tメンとの調査を通して、『ボーダー・インシデント』の少年たちの素晴らしい物語を見つけた。ロケ撮影はしたが、メトロ側は全く乗り気ではなかった。公開された時、彼らは驚愕した。彼らが考える映画とは全く違う作品だったんだ!」
ロジャー・ウェストコムは本作を古典的な西部劇と比較し、「典型的な西部劇の自由からは程遠いものの、『国境事件』は(マン監督の前作フィルム・ノワール『T-メン』の)墨のように深く沈んだ映像美を共有している。『広い』空間ではあっても『開かれた』空間ではない。アルトン監督の美しく表現されたグレートーンでありながらも陰鬱な映像は、遠くの地平線をアメリカ国境のように閉ざしている。無防備で罪のない農民たちが常に存在することが、『ボーダー・インシデント』に刺激を与え、わずか二人の警察官の運命から、下層階級全体の運命へと、物語の重大さを高めている」と述べている。

「私服警官だ」ボランティアが撤収 香港火災、現場で見た「民」排除(朝日新聞有料記事)

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火災があった高層住宅近くの広場では発生翌日、官民双方のボランティアらが生活用品などを配っていた=2025年11月27

 香港の高層住宅で起きた火災をめぐって市民に対する統制が強まる中、香港政府は住宅から焼け出された住民らを支援する民間ボランティア団体の行動にも目を光らせている。11月29日には、警察の要求によって民間団体が「撤収」させられるなど、市民らの自発的な支援活動が妨げられている。

夜の警察官、求めたのは撤収だけでなく

 「私服警察官だ」

 デニムパンツ姿にリュックを背負った中年男性が民間団体の女性と話し込む様子を、少し離れた場所から見ていた仲間の女性がつぶやいた。

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火災があった高層住宅の近くで、広げた支援物資を片付ける民間のボランティア(左手前)。私服警官とみられる男性(右奥)が立ち退きを求めていた=2025年11月29日

 29日午後10時半すぎ、現場近くの共用スペースで、民間団体が水やインスタントラーメンなど支援物資の撤収作業を始めていた時のことだ。

 この30分ほど前には、腰に拳銃や警棒を下げた制服姿の警察官5人が現れ、翌朝までに物資を片付けるよう民間団体側に命じていた。すでに集まった物資の保管場所はほかにはなく、戸惑う民間団体のメンバーの前に、今度は私服姿の警察官が現れたのだった。

 私服警察官は20分ほど立ち話をしたあと「バイバイ」と手を振り、その場を去った。民間団体関係者によると、警察官は「翌日午後2時までに撤収すること」「集めた物資は政府の管理下にあるボランティア団体に引き継ぐこと」を要求した。連絡先も交換させられたという。

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火災があった高層住宅の近くの広場では民間ボランティアらが生活用品などを配っていた=2025年11月28日

 民間団体のあるメンバーは「政府は民間団体を排除し、官製ボランティア団体の存在感を高めようとしている」と語った。「政府は自分たちだけが功労者だと示したいのだろう」

 民間団体関係者によると、出火から3日後の29日午前、火災直後から複数の団体が物資の配給拠点としていた広場に警察官が現れ、立ち退きを命じるようになったのだという。その後、広場は規制線で囲まれ、警察官がいたる場所で警戒にあたっていた。

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ボランティアが活動していた、火災現場近くの広場を監視する警察官たち。この日の午前中に民間ボランティアは立ち退きを命じられ、一帯には規制線が張られた=2025年11月29日

 別の民間団体の男性によると、警察は「広場に人が集まりすぎると近隣住民に迷惑」「ボランティアが無秩序に集まり混乱している」と理由を説明した。

政府の狙いはどこに

 ただ、男性は「政府は集まった人の中に民主派が紛れ込み、反政府的な動きにつながることを警戒しているようだ」とも語る。

 男性はボランティア団体が乱立していたという点は認めつつ、「強制的に排除するやり方は支持できない。私たちは政府だけでは届かない支援をしたいだけだ」と訴える。

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高層住宅火災で現場近くに設けられた避難所の入り口。多くの人が物資を携えて駆けつけた=2025年11月27日

 政府側による民間団体の排除は、政府が手配した避難所で顕著だ。ある民間団体によると、発生直後は民間団体も活動ができたが、翌日になると官製団体が入り込み、民間団体を「違法であるかのように扱い始めた」(民間団体関係者)という。その後は避難所に入ることすら許されない状況が続いている。

 香港政府がこうした動きをとる背景には、火災をめぐる不満が、管理下にない市民活動を通じて反政府的な活動に発展することへの警戒があるとみられる。また、政府の支援を強調するねらいもありそうだ。香港メディアによると、香港警察は11月30日、ボランティアに参加していた女性を拘束した。詳しい理由は明らかになっていない。

今朝の東京新聞から。

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衰退しそうな米国 「偉大な国」にした三つの公式守れ N.Y.Times(朝日新聞有料記事より)

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ニコラス・クリストフ

 米国が今日、世界で支配的な超大国となってきた秘密の公式とは何だろうか。

 三つの根本的な要素を指摘したいが、いずれも今や弱体化している。私たちの世代とドナルド・トランプ大統領の歴史的遺産について考える時、それは見出しを飾るような政治的争いよりも、米国の国際的な地位が徐々に低下していることのほうになるのではないだろうか。

 愛国心とは、旗を振ることではなく、2世紀以上にわたって米国を卓越した存在にしてきたこれら三つの力を守ることだ。

すべての疑問への答えは教育に

 あらゆるレベルでの教育への取り組みが、科学技術分野での世界的リーダーシップをもたらす――。

 ほとんどすべての疑問に対する答えは教育にあると私は信じている。最も高い利益を生む長期投資は、多くの場合、人的資本への投資だ。しかし、歴史を通じて、ソクラテスを処刑し、ガリレオを異端審問にかけ、書物を禁じようとする者たちが常にいた。

 米国が世界の主導的国家になったのは、19世紀以降、大衆教育に力を入れていたことが大きな要因だ。その間、他の国々はほんの一握りのエリート層だけを教育していた。このことはクラウディア・ゴールディン氏とローレンス・F・カッツ氏が2008年の画期的な著書「教育と技術革新の競争」で主張している。

 米国は公立小学校の普及と高校・大学進学率の拡大を推進した。その後、米国の研究型大学は世界をリードする存在となり、シリコンバレーをはじめとする各地に技術拠点を育んだ。そのため、米国は「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるテクノロジー企業を誇るが、欧州にはこれに匹敵するものはない。米国の科学技術の卓越性は、大学、研究資金を提供する連邦政府機関、そしてその知識を商業化する民間企業の間の共生的なパートナーシップのおかげでもある。

 米国の教育における優位性は、高校卒業率や若者の理科・数学のスキルで東アジア諸国に追い抜かれたことで、数十年前から低下し始めていたと言えるだろう。しかしトランプ氏は、教育成果の向上策を示す研究やデータ収集を含む教育省の機能を骨抜きにすることで、教育への圧力をさらに強めている。さらに悪いことに、彼は米国の名門大学に対して戦いを仕掛けている。

 米国の科学における卓越性は、経済競争力と幸福をもたらす。しかしトランプ氏は、がん治療に大いに有望なmRNAワクチン開発プログラムを縮小し、医療研究への投資を削減している。

 どの大統領もハーバードやコロンビアのような大学を誇りに思うべきであり、潰そうとしてはならない。私たちは空母だけで中国に対抗するのではなく、それ以上に自国の若者を教育し、人工知能、合成生物学、材料科学の研究をリードすることで対抗している。しかし、中国は新興技術においてすでに米国を上回っているとの見方もある。

「民主主義存亡の脅威」をもたらす

 だからこそ、1957年のスプートニク1号(旧ソ連による人類初の人工衛星)打ち上げ後と同じように、この国を科学と教育に再びコミットさせるべきだ。ところが、トランプ政権による名門大学への敵意は、ワクチンから気候変動に至るまで科学に対するより大きな軽蔑を反映しているように見える。これは、中国で秦の始皇帝が学者を生き埋めにしたことにまでさかのぼり、この国ではスコープス裁判(1925年、米テネシー州で進化論教育を禁じた法律をめぐり争われた裁判)、マッカーシズム(赤狩り)、そして2017年の大学基金税(米国で大規模私立大学の基金収益に課された税)にまでさかのぼる反知性主義の、最新の開花と言えるだろう。

 法の支配に支えられた自由市場と自由貿易――。

 これは、トランプ氏が最も敬意を払っている柱だ。彼は資本主義と自由市場をおおむね信じている(おそらく多くの民主党員よりも)が、自由貿易からの急速な後退を主導してきた。彼の関税は1930年代以降で最も高い。また、トランプ氏は市場経済の基盤のいくつかを体系的にそぎ落としてきた。市場は慎重な財政・金融運営によって繁栄するが、彼の減税は債務の急増を招き、彼は米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性を押しつぶそうともしている。腐敗は資本主義の害毒だが、彼の一族は大統領職をATMのように利用しているように見える。

 法の支配はどうだろうか?

 英国が産業革命発祥の地となったのは、保護と予測可能性を提供する法制度があったからでもある。対照的に、トランプ氏は下級裁判所の判断を繰り返し無視し、司法省を利用して政敵を罰してきた。ロナルド・レーガン大統領(当時)によって任命された連邦判事のマーク・L・ウルフ氏は11月、辞任すると発表した。トランプ政権による「法の支配への攻撃」とそれが「民主主義存亡の脅威」をもたらしていることについて率直に発言するためだ。

 移民と世界中の最も優秀な人材の吸収――。

 東ヨーロッパ出身のアルメニア難民だった私の父は、1952年に米国に到着した。その後まもなく、家主は「難民からお金を受け取ることはできません」と言って家賃を返した。

 このような歓迎の精神は、必ずしも一貫して実践されているとは言えないものの、米国を非常に豊かにしてきた。米移民評議会によると、「マグニフィセント・セブン」のテクノロジー企業のうち4社は移民によって率いられ、世界の有力企業リスト「フォーチュン500」の46%は移民またはその子どもらによって設立された。

 これら三つの要素だけでは、米国の偉大さの完全な秘訣とは言えない。国内市場の物理的な大きさそのもの、民主主義、そして州同士の通商の容易さも寄与した。そして、これら三つの要素においてさえ、私たちはしばしば不十分だった。

ただ疲れ果てた老国に

 しかし、私はこれら三つの要素こそが、今日の米国が世界をリードする大国として台頭してきた中心的要素だと考えている。そして今、これらの強みは、特に大学、貿易、法の支配、そして世界最高の頭脳の獲得において、体系的に損なわれつつある。

 米国の世界的な優位性に対するリスクは、トランプ氏のホワイトハウスのボールルーム(大広間)、政府閉鎖、そして彼の対立者に対する醜悪な発言ほどには注目されない。しかし、彼の最も重要な遺産は、私たちの経済エンジンの基盤に与えているダメージかもしれないと私は考える。

 今年のノーベル経済学賞は、イノベーションが経済成長をいかに推進するかを明らかにした3人の学者に贈られる。彼らは、イノベーションが移民、優れた大学、そして世界へのアイデアの開放性から生まれることを強調し、今後の「暗雲」を警告した。

 インドのジャワハルラール・ネルー首相が自国を例に挙げて「希望と活力が徐々に漏れ出していく」と表現したように、私たちは歴史を通して、偉大な国家が時としてエネルギーと推進力を失い、衰退していく様を繰り返し見てきた。西暦1000年、世界最大の都市は、当時世界で最も重要な国であった中国の開封だった。しかし、中国と開封はその後のほぼ千年間衰退し、近年になって復活した。

 米国がそのような衰退を経験するかどうかはわからないが、貿易と移民を絞り、大学を抑圧するなら、衰退する可能性はより高そうに見える。特別な秘訣を失えば、米国はただ疲れ果てた老国となり、他の若い国々に追い抜かれるのを見ているだけになるだろう。これこそ米国の命運を左右する重大な問題なのだ。 

大埔・宏福苑の大火災







「仮面の裏側」1941年

ヴェーラで始まったピーター・ローレ特集の一本。

希望に燃えるハンガリーからの移民、ヤノシュ・サボー(ピーター・ローレ)は、ニューヨーク到着初日にホテルの火災に巻き込まれ、顔にひどい傷を負う。容姿を理由に就職を断られ、時計職人として卓越した技術を持つにもかかわらず、どんな仕事でも引き受ける。極貧の中で、不正は幸福をもたらさないと信じながらも、食料、医薬品、そして唯一の友人ディンキー(ジョージ・E・ストーン)に暖かい寝床を与えるため、金庫破りに手を染める。やがて彼は窃盗団のリーダーとなり、資金を集めて自分の顔を模したラテックスマスクを製作し、着用する。

ヤノシュは、彼の良い面しか見てくれない盲目の女性ヘレン(イヴリン・キーズ)と恋に落ちる。ヘレンはヤノシュの犯罪生活から脱却しようとする。残念ながら、ヤノスの一味は彼が警察に裏切ったと思い込み、車爆弾で彼を殺そうとする。ヤノスは一命を取り留めるが、ヘレンは命を落とす。報復として、ヤノスは一味が国外脱出を計画している自家用飛行機のパイロットに変装する。アリゾナの砂漠に飛行機を着陸させ、燃料を放出する。自殺行為として、ヤノス自身も仲間も水も食料もなく孤立無援となり、全員がゆっくりと死へと向かう。映画の終盤、ヤノスと敵の遺体が警察によって発見される




『仮面の裏側』はフランス系アメリカ人監督ロバート・フローリーが監督を務め、ポール・ジャリコとアレン・ヴィンセントが脚本を手掛けた。この映画はトーマス・エドワード・オコンネルのラジオドラマ『The Interim』を原作としている。フローリーは、ジェームズ・ホエールが監督に就任する以前、ユニバーサル・ピクチャーズの1931年映画『フランケンシュタイン』に携わっており、『モルグ街の殺人』も監督している。この映画はピーター・ローレを主役に据えて脚本が書かれ、ローレ自身の人生とも重なる部分があった。共同脚本家のジャ​​リコは「私の記憶では、脚本は『仕立てられた』もので、ある意味ではローレは既に決まっていた」と回想している。ローレはコロンビア・ピクチャーズと契約していた2本の映画のうち、最初の作品としてヤノシュ・"ジョニー"・サボ役で主演に抜擢された。ヴィクター・フレミングの『風と共に去りぬ』でスーレン・オハラを演じたエヴリン・キーズが、ヤーノシュの恋人ヘレン・ウィリアムズ役に抜擢された。ドン・ベドー、ジョージ・E・ストーン、ジョン・ティレル、サイ・シンデルらが脇役としてキャスティングされた。ティレルとシンデルは共にコロンビア・ピクチャーズの常連で、スタジオの短編映画『三ばか大将』に出演したことでよく知られていた。
主要撮影は1940年11月6日に始まり、20日間続いた。

『仮面の裏側』は公開当初は不評だった。1941年のニューヨーク・タイムズ紙の批評では、「心理描写に多少の気取りはあるものの、『仮面の向こうの顔』は、ピーター・ローレの才能がまたしても陳腐なセリフ回しと型通りの筋書き操作によって阻まれた、またしても露骨なメロドラマ作品と片付けられるだろう」と酷評された。
その後の批評はより肯定的になった。ブロックバスター社の映画・ビデオガイドは、4つ星中3つ星の評価を与え、演出、設定、そして演技を称賛した。レナード・マルティンは4つ星中3つ星の評価を与え、「低予算ながら非常に良くできた」と評した。オズゥス・ワールド・ムービー・レビューのデニス・シュワルツは、この映画にA+からFの評価基準で「B+」を与え、「アメリカンドリームが醜く間違ったものに変わっていくというビジョンを提示するホラーストーリー」と呼んだ。TVガイドは、この映画を4つ星のうち2つと評価し、「人間の苦しみを描いたスタイリッシュな映画」と呼んだ。

ペロシ氏は民主党に範を示した 高齢政治家は道を譲れ N.Y.Times(朝日新聞有料記事より)

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ミッシェル・ゴールドバーグ

 ワシントンで、自分のことを余人をもって代えがたい存在だと考える資格がある人は、ナンシー・ペロシ氏以外にほとんどいないだろう。彼女は女性として初めて就任した下院議長として、内部が分裂して不均質な民主党連合を巧みにまとめあげた。彼女がいなければ、医療保険制度改革は実現しなかっただろう。彼女はいつも、優れた判断力を示してきた。イラク戦争の際に、民主党の指導部として数少ない反対票を投じたことも、その一例だ。トランプ政権の1期目、彼女はトランプ氏の神経を逆なでする手腕を発揮し、繰り返し彼を挑発し、だだっ子のような暴言を引き出した。ある共和党の重鎮は2019年、ニュースサイトのポリティコに対して、そうしたトランプ氏の暴言を「彼女の思うつぼだ」と嘆いた。

 それにもかかわらず、ペロシ氏が22年、新世代に道を譲るために、指導部から退く判断をくだしたことは正しかった。彼女の後継の下院党トップとなったハキーム・ジェフリーズ氏がペロシ氏ほど印象的な人物ではなかったとはいえ。そして今回の引退という彼女の判断も、正しい選択だ。深刻な高齢化問題を抱える民主党に模範を示すことになるからだ。

高齢化と停滞が深刻な民主党

 この問題のもっとも際だった例は、もちろん、81歳のジョー・バイデン氏が大統領再選を目指して出馬するという、破滅的な決断だった。しかし、問題の根はずっと深いところにある。民主党はかつて、若々しく活力に満ちた党だった。ジョン・F・ケネディ、ビル・クリントン、バラク・オバマの各氏を思い出してほしい。リンドン・ジョンソン元大統領でさえ、誰も彼を若々しい新人とは思っていなかったが、1963年に大統領に就任したときはわずか55歳だった。近年、民主党は著しく高齢化が進み、それに伴い停滞を深めている。

 85歳のペロシ氏を含めて、70歳以上の民主党下院議員が50人いるのに対して、共和党は30人強だ。年明け以降、民主党議員3人が在職中に死亡し、議席数でわずかに負けているだけだった共和党との差が広がってしまった。トランプ氏がワシントンへの州兵派遣を決めて、事実上の軍事占領下に置いたとき、ワシントン選出の唯一の下院議員であるエレノア・ホームズ・ノートン氏は、姿を消してしまった。ニューヨーク・タイムズによると88歳の彼女は、仕事をするのにも苦労しており、長年の知人さえ認識できないことがあるようだという。それでも彼女は、来年の中間選挙で再選を目指すと主張しているのだ。

 上院の民主党を率いているのは、74歳のチャック・シューマー氏だ。堅実な制度重視派だが、アメリカで深刻化する政治危機について、率直に語る意志も能力もない。やれることといえば、トランプ氏が毎日のように踏みにじっている規範を尊重するよう、トランプ氏に力なく呼びかけることだけだ。たとえば、9月の政府閉鎖について、シューマー氏は「トランプ氏が正気を取り戻すことを願う」と述べた。さらに、トランプ氏には、共和党議員が「それは大統領がすべきことではないです」とそっと助言するべきだというのだ。

 シューマー氏は最近、77歳になるメーン州知事のジャネット・ミルズ氏を上院議員選に立候補するよう勧誘した。彼女が当選すれば、上院史上最高齢の新人議員になる。

 確かに年齢は、時代の流れをとらえるための完璧な指標ではない。84歳のバーニー・サンダース氏ほど若者に愛されている政治家はいないかもしれない。しかし、先日のニューヨーク市長選で私たちが目の当たりにしたように、新世代の有権者にアプローチする上で、若い候補者は明らかに優位だ。その理由は、候補者がどんな属性を持つのかというアイデンティティー政治の問題を、はるかに超えたところにある。

若いカリスマが必要だ

 ゾーラン・マムダニ氏がニューヨーク市長選で勝利した理由の一つは、ショート動画から長時間のポッドキャストまで、新しいメディアに対する直感的な理解力であり、物価がますます高騰する都市で没落しつつある自分たちの居場所を必死に守ろうとする若年層の絶望感を、同じく直感的に理解していた点にある。NBCニュースの出口調査によると、民主党が苦戦してきた若年男性層で、彼は34ポイントもの差をつけて勝利した。

 マムダニ氏の選挙運動の多くの側面は、リベラルな大都市以外では再現できないかもしれない。しかし、可能なことが一つある。民主党が必要としているのは、カリスマ的な指導者だ。若く、現代の分断された情報の生態系を理解し、疎外感にとらわれて絶望している人々の希望を呼び起こす方法を知っているような。そうした人材が立候補できるように、年配の政治家は道を譲らなければならない。

 役得に慣れきったベテランの政治家が、それを手放すのは難しいかもしれない。ニューヨーク・マガジンが民主党の老人政治を特集した記事で、筆者のレベッカ・トレイスター氏が政治コンサルタントのジェン・ブルーシュタイン氏の言葉を引用している。「多くの政治家は、自分が大勢のスタッフに支えられて常に重要な存在である状態ではなくなることを、想像すらできないのだ」

 しかしペロシ氏は、大義のために自分自身のエゴを脇に置く姿勢を、誰よりも進んで示してきた。

 彼女に関する私の好きなエピソードの一つは、モリー・ボール氏が書いた20年出版の伝記「ペロシ」に記されている。05年のことだ。ペンシルベニア州選出の保守系民主党員で元海兵隊員のジャック・マーサ氏が記者会見を開き、開戦当初は支持していたイラク戦争に反対を表明した。マーサ氏は「我々の軍隊は苦しんでいる。国の未来が危機に瀕している」と訴えた。これが、世論の転換点となった。マーサ氏が反戦運動の主要な顔となる一方で、ペロシ氏は彼と並んで前面に出なかったことで繰り返し批判された。人気政治風刺番組「サタデー・ナイト・ライブ」は彼女の臆病さを題材にしたコントまで放送した。

ペロシ氏が気づかせてくれたこと

 しかし、これこそがペロシ氏の計画だったのだ。「すべてはペロシ氏とマーサ氏が協力した通りの筋書きだった」とボール氏は書いている。彼らは「一人の男による聖戦に見えるように仕組むことで合意していた」というのだ。これが、彼女の偉大さの秘密の一端だ。彼女は政治に関する世論には異常なほど感度が高い一方で、自分自身の評判はまったく気にしないのだ。

 今、ペロシ氏はきっと分かっているはずだ。恐怖と怒りに震える民主党支持者は党の指導部に背を向けている。9月のピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、民主党支持層の59%が民主党の議会指導部に不支持を表明した。新しい声への渇望が渦巻いている。だからこそ、ペロシ氏はもう一度時代の要請に応じたのだ。

 彼女は引退表明の動画で年齢には触れていないが、示唆はあった。愛するサンフランシスコに向けて彼女は語りかけた。「この町が常に未来の代名詞であるのには理由がある。ここにいる私たちは未来を恐れない。私たちが未来をつくりだすのだ」。同じことが民主党にも言えるはずだ。ペロシ氏がそのことに気づかせてくれたことに、私たちは感謝しなければならない。 

「流砂(Quicksand)」 1950年

本日より始まるヴェーラのローレ特集の一本。

『クイックサンド』は1950年のアメリカのフィルム・ノワールで、ミッキー・ルーニーとピーター・ローレが主演し、ガレージの整備士が犯罪へと堕ちていく様を描いている。アーヴィング・ピシェルがハリウッドのブラックリスト入りする直前に監督を務めました。この映画はルーニーにとって型破りな役柄を演じ、MGMの人気シリーズ『アンディ・ハーディ』で演じた無邪気な「いい人」とは全く異なる役柄を演じた。



カリフォルニアに住む若き自動車整備士、ダン・ブレイディ(ミッキー・ルーニー)は、近くのレストランで働く金髪のファム・ファタール、ヴェラ・ノヴァク(ジーン・キャグニー)とのデート代を払うため、職場のレジから20ドル(現在の価値で261ドル)を「借りる」。
盗んだ20ドルを返そうと、ダンは宝石店で100ドルの腕時計(現在の価値で1,307ドル)を頭金として1ドルだけ支払うことにする。この契約では、腕時計を分割払いで購入する売買契約に署名する必要がある。彼はすぐに質屋に行き、腕時計を30ドル(現在の価値で392ドル)で質入れし、そのほとんどを整備工場の不足分に充てた。しかし翌日、ダンは捜査官に追跡され、法的に所有権のない腕時計を質入れしたことで分割払い契約に違反したと告げられる。捜査官は、24時間以内に時計の代金100ドルを宝石店に全額支払わなければ、重窃盗罪で起訴され、州刑務所で3年の懲役刑に処されると告げる。ペイデローンの申請に失敗し、車を担保に別のローンを組もうとしたが失敗し、窮地に陥ったダンは、多額の現金を持ち歩くことで知られる酔っ払ったバーの常連客を襲撃する。
サンタモニカ・ピアにある怪しげなゲームセンターの経営者で、ヴェラと親密な関係にあったニック・ドラモシャグ(ピーター・ローレ)は、ダンの強盗の証拠を発見する。彼は若い整備士を脅迫し、黙秘と引き換えにダンの職場から車を奪うよう要求する。ダンは車を盗み、ドラモシャグから証拠と交換する。間もなく、ダンの倫理観に欠ける上司オーレン・マッキー(アート・スミス)がダンを問い詰め、ダンが車を盗んだことを知っていると告げる。マッキーは車の返還か現金3,000ドル(現在の価値で39,207ドル)を要求し、さもなければ警察に訴えると脅した。
ダンとヴェラはドラモシャグのゲームセンターから月末のレシートを盗み、3,610ドル(現在の価値で47,180ドル)を手に入れた。ダンはその金でマッキーに支払うつもりだった。しかし、ヴェラは半分の金を受け取る権利があると感じ、1,800ドル(現在の価値で23,524ドル)でミンクのコートを買ってしまう。ヴェラの行為を知ったダンは激怒し、一人でガレージに戻り、マッキーに1,800ドルで和解を申し出る。マッキーは金を受け取るが、警察に通報するために電話を取り出す。マッキーが銃を突きつけると、二人は揉み合いになり、ダンは電話コードでマッキーの首を絞める。マッキーが死んだと確信したダンは、マッキーの銃を奪い、ヴェラの元へ戻り、自分がしたことを伝える。そして、一緒にテキサスへ逃げるようヴェラに頼む。ヴェラは当局に証拠がないと主張し、行かない。ダンはヴェラの身勝手な態度に嫌気がさし、飛び出す。
ヴェラのアパートの外では、ダンに忠実ではあるものの、あまり評価されていない元恋人ヘレン(バーバラ・ベイツ)が、彼と話をするために車の中で待っている。彼女は以前、街で彼を見かけ、彼が困っていることに気づいていたのだ。彼女は、殺人容疑で逮捕されるのを避けるため、ダンに同行して町を出ることにした。車が故障した後、ダンはセダンをカージャックする。そのセダンは、同情的な弁護士(テイラー・ホームズ)が運転していた。ダンはサンタモニカ桟橋に到着すると、その車から降りる。そこでダンは、友人がチャーターしたボートでメキシコへ逃亡するという新たな計画を実行する間、ヘレンに弁護士と一緒にいるように告げる。そして、国境を越えて無事に再定住したら、ヘレンを呼び寄せると約束する。数分後、弁護士とヘレンはセダンのラジオから、マッキーが怪我から回復したというニュースを聞く。二人は桟橋に戻り、ダンを探し出して殺人犯ではないことを伝える。一方、警官たちはそこでダンを発見し、追跡中に銃撃を受けて負傷し、拘束する。ヘレンはダンを慰め、釈放されるまで待つと誓う。

ルーニーはピーター・ローレと共同出資したが、利益の分配は第三者によって支払われなかったと伝えられている。映画の大半はカリフォルニア州サンタモニカで撮影され、旧サンタモニカ埠頭での屋外シーンも含まれている。ナイトクラブのシーンでは、ジャズ・コルネット奏者のレッド・ニコルズと彼のファイブ・ペニーズ・グループの姿が映し出されている。

ピーター・ローレの共演者たちは、『クイックサンド』での彼の演技に感銘を受けた。ジーン・キャグニーは後のインタビューで、ローレについて次のように語っている。「彼は全力を尽くして演じました。この映画は一流の作品ではありませんでしたが、彼はまるでA級映画中のA級映画であるかのように取り組んでいました。」

1950年の新聞や業界紙の批評は賛否両論で、多くはやや好意的なものから否定的なものまで様々だった。ロサンゼルス・タイムズ紙は、同年、この映画に概ね好意的な批評を与えた主要紙の一つである。同紙は映画の筋書きを「予想通り」と評しながらも、「毎分観客を虜にする映画」だと断言している。ロサンゼルス・タイムズ紙はまた、脇役たちの演技と、ルーニー演じるダン・ブレイディの繊細な演技にも特に注目している。「ミッキーは、必要以上の身振りや表情の変化を一切せず、主に目を通して感情や思考を表現している。……ジーン・キャグニーは、たった5文字の言葉でしか表現できない少女を演じ、その役柄を生き生きと演じている。ピーター・ローレは実に陰険な役柄を演じ、バーバラ・ベイツが演じる「忍耐強いグリゼルダ」のような恋人は、たとえ無関心なミッキーにあまりにも献身的すぎる彼女を殴りたくなる瞬間があったとしても、きっと楽しめるだろう。」

1950年当時、エンターテイメント業界で最も広く読まれていた業界紙『バラエティ』のハーム・ショーンフェルドは、『クイックサンド』を「犯罪は割に合わないという教訓を描いた、まあまあの映画」であり、「テンポが良く、分かりやすい」脚本だと評している。彼はまた、プロットに「何度かあり得ない展開」があると批判しつつも、「映画全体のスピード感が最後まで興味をそそる」と付け加えている。ショーンフェルドはまた、ルーニーの演技についても「まずまず」と評価している。「ドラマティックな俳優としては、ルーニーは有能だが、演技の幅広さを見せていない」と彼は書いている[7]。シカゴ・デイリー・トリビューンの評論家メイ・ティニーも、この犯罪ドラマに賛否両論の反応を示している。彼女は「ルーニーは『クイックサンド』で犯罪者役を演じている」と題した評論で、この映画を「気取らない」と評し、ストーリー展開の「不自然さ」を際立たせる後半部分よりも前半部分を強く支持している。
序盤のシーンは軽快で説得力があるが、中盤以降は明らかに不自然になり、ハッピーエンドに至るまでにかなりの無理やりな演出が必要となり、全く説得力がない。ルーニーは役柄に見事に合致し、巧みに演じているが、キャグニー嬢はあまりにも巧妙に邪悪に描かれすぎている。ピーター・ローレは短い出演ながら好演している。作品全体を通してリアリズムを重視しているが、それが筋書きの陳腐さを覆い隠してしまうほどではない。

ニューヨーク・タイムズ紙の批評は、この映画に対してはるかに厳しい評価を下し、「独創性のないメロドラマ」であり、「独創性のないアイデアを陳腐なやり方で押し付けている」と評している。タイムズ紙は、「ルーニー氏が『ああ、私はもう最悪だ』と悲しげに語った言葉が全てを物語っている」と断言している。ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン紙も、同じ街の新聞社に同調し、この映画を「退屈な映画サーガ」と呼び、ルーニーの「演技も同様に退屈」だと評している。さらに同紙は、ルーニー演じるダンを「脚本家ロバート・スミスによって描写が不十分な、全く不快なキャラクター」と評している。
公開から数十年が経った今でも、『クイックサンド』は映画史家や映画ファン、特にフィルム・ノワールに関心を持つ人々の注目を集め続けている。AllMovieのブルース・エダーは2013年のレビューで、ルーニーは「多くの人が彼のキャリア最高の演技だと捉えている」と評し、この映画を「同時代における最も魅力的な社会ドキュメンタリーの一つ」と評している。リチャード・メラーは、英国の映画批評サイトEye For Filmに寄稿した以前のレビューで、この映画が観客を惹きつける本質的な魅力、つまり「庶民的なダン・ブレイディ」の堕落を目の当たりにできる魅力に焦点を当てている。メラーの見解では、この堕落は「甘ったるいほど予測可能ではあるものの、楽しい没落」である。そのため、彼は2009年のレビューで、初公開から数十年を経て、より広範な問題やより複雑な解釈をこの映画に結びつけることの妥当性に疑問を呈している。彼の意見では、この映画のメッセージは極めてシンプルで、時代を超えた普遍的な教訓を伝えている。「『クイックサンド』が、一部の人が主張するように当時の社会不安を反映しているかどうかは疑わしいが、ダンのような騙されやすい愚か者にとって、巧妙な策略家がもたらす危険性を確かに証明している」と彼は主張する。

今朝の東京新聞から。

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