香港郊野遊行・續集

香港のハイキングコース、街歩きのメモです。

2022年04月

今朝の東京新聞から。

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朝日新聞より(有料記事)




  「チナ(中国)!チナ!」
 船体を水色のペンキで塗った漁船の上で漁師が声を上げた。釣り糸を巻き上げる別の漁師の向こうに、1隻の駆逐艦が見える。

 「船体番号は172」「海警局か?」「いや海軍だ」

 漁師たちの声が飛び交い、船上に緊迫した空気が走る。昨年9月、南シナ海に浮かぶインドネシア・ナトゥナ諸島沖で地元の漁師が撮影した53秒間の動画だ。


 10月から3月上旬までの時期、強い風にあおられて海は荒れ、波の高さは最大で7メートルに及ぶこともある。激しく揺れる漁船から届けられたこの映像は、瞬く間にネット上で拡散した。現場がインドネシアの排他的経済水域(EEZ)だったこともあって世論を刺激し、同国の海軍が出動する騒ぎとなった。

 中国が南シナ海での権益を主張するために引いた「9段線」はその形状から「牛の舌」とも言われ、インドネシアのEEZと重なっている。


 今年3月、記者はナトゥナ諸島にある大ナトゥナ島の漁船に乗り込んだ。18歳から海に出ているというアズワル(46)に中国船の見分け方を聞くと、こんな答えが返ってきた。「中国船は大きい。他の外国船の倍以上だ。一目で分かる」

 地元の船はせいぜい5トン程度の木造船で、重厚な鉄製の中国船には太刀打ちできないという。アズワルは釣り糸を巻き上げながら、渋い顔で言った。「沖で中国船に追い回されたこともある。ぶつかればひとたまりもない」

 南シナ海の権益をめぐる対立は1970年代、石油や天然ガスなどの地下資源への期待が高まったことなどから激しくなった。以来、主に中国と争ってきたのはベトナムやフィリピンだったが、近年、中国船の活動域が広がったことで、摩擦は「牛の舌」の先端に位置するインドネシアにも及んでいる。

 ナトゥナ諸島は154の島からなる。沖合にはサンゴ礁が広がり、カツオやフエダイなどがとれる。年間50万トンの漁獲量が見込まれる豊かな漁場で、島々に暮らす約8万3千人のうち、約4割が漁業を生業とする。

 9段線とインドネシアのEEZが重なるこの海域を、中国政府は「伝統的な中国の漁場」だと主張してきた。これに反発するインドネシア政府が2017年、この海域を含むナトゥナ諸島の北側の海を「北ナトゥナ海」と名付けると、翌年以降、この海に姿を現す中国船が目立ち始めた。

 インドネシアの海上保安当局によると、2018年に確認された中国船の数は数隻程度だったが、2019年には50隻の中国漁船に加え、中国海警局と海軍の艦船が海域に進出する事態になった。

 2021年も漁船、中国海警局や海洋調査船などを含め30隻の中国船が確認された。匿名を条件に取材に応じた海上保安当局幹部は、「全ての中国船の数を把握できておらず、実際の数はさらに多い可能性がある」と語った。


 インドネシア政府は海上保安当局や海洋水産省の巡視船、さらには軍の艦船もEEZ内に派遣して警戒する。ナトゥナ諸島を管轄する行政当局のトップ、ワン・シスワンディ(53)は、「軍や海保が使う新たな基地の建設をインドネシア政府は検討している。既存の滑走路を延伸し、空軍機の離着陸ができるようにする計画もある」と明かす。

 ただ、ナトゥナ諸島沖を24時間態勢で監視する海保の支部長、ムークリス(42)によると、中国船の侵入に目を光らせる船の数や装備は「十分とは言えない」という。

 政府にばかり任せていられないと、漁師たちも立ち上がった。「インドネシアの海と魚を守ることは、私たちの生活を守るのと同じだ」。ナトゥナ諸島の地元漁師約300人でつくる「ナトゥナ漁師連合」リーダーのヘンドリ(50)は、言葉を選びながら訴えた。

 ヘンドリによると、インドネシアのEEZ内で密漁する外国船は今もベトナム船が大半で、中国船は一握りにすぎない。ただ、漁船が軍艦や当局の公船を引き連れてくる点で中国の動きは他国と異なるという。

 ヘンドリは記者の目を凝視し、こう続けた。「中国船は、漁をしているだけには見えない。『ここは自分たちの海だ』と主張しているように見える。その意味で他の外国船よりもたちが悪い。魚だけでなく海まで盗まれたら、漁師はどうやって生活すればいいのか」

 ヘンドリら漁師たちは2019年10月、SNSグループを立ち上げ、外国船を見つけたら写真や動画を撮影し、目撃した位置を記録、投稿する活動を始めた。冒頭の動画も、このSNSグループに投稿されたものの一つだ。

 2021年には、海軍や海保、メディア関係者など約100人が参加する別のSNSグループもできた。ヘンドリは「ナトゥナで起きていることをより多くの人に伝えたい」と力を込める。世論を追い風に政府の背中を押し、中国船への対応を強めるよう求めている。

 中国は巨大経済圏構想「一帯一路」など、手厚い経済協力で東南アジア諸国の取り込みを進める。にもかかわらず、南シナ海で力に物を言わせた強圧的な姿勢を崩さないのはなぜなのか。


 2016年、フィリピンの訴えを受けたオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は、中国が南シナ海で展開する主張を全面的に退けた。しかし、中国政府は判決を「紙くず」と表現し、その翌日に白書を発表。「南シナ海における中国人民の活動は2千年あまりにわたる。南シナ海の島々に対する中国の主権と南シナ海における権益は、長い歴史の過程で確立されたものだ」と、あらためて自国の「歴史的権利」を持ち出して判決に背を向けた。

 「海の憲法」と呼ばれ、仲裁裁判が依拠する国連海洋法条約は1982年に採択され、中国も1996年に批准している。しかし、南シナ海問題で中国の立場を対外的に代弁してきた政府シンクタンク、中国南海研究院名誉院長の呉士存は、取材にこう語る。

 「中国は海洋法条約が生まれる半世紀前まで南シナ海の管轄権を握っていた。現代の国際法の網で世界を切り取れば、中国の主張は行き詰まる。西側の敷いたレールに乗るのは不利なのだから、我々は自分たちの言葉で南シナ海を語れるようにしなければならない」

 呉の発言ににじむのは、帝国時代の領域意識に基づく「失地回復」への中国の執着であり、時間の針を巻き戻して既存の国際ルールの修正を迫ろうとする「後発の大国」の特異な論法だ。

 2015年10月、公式初訪英を控えロイター通信の書面インタビューに応じた共産党総書記の習近平(シー・チンピン)は「拡張主義とは自国の領土以外の土地を要求することをいう。中国は一度もそんなことをしたことがないのだから、疑念や批判を受けるいわれはない」と言い切った。

 歴史を盾に、国力を矛にして現行の国際秩序にあらがう中国を前に、周辺国は難しい選択を迫られる。

 インドネシア政府は2014年以降、違法漁業で拿捕(だほ)した中国船やベトナム船などを「見せしめ」として爆破処理してきたが、2019年以降は中国船の爆破の報道はない。透けるのは、最大の貿易相手国である中国との摩擦を避けたいという思惑だ。

 ヘンドリは「政府はもっと厳しい態度で応じるべきだ」と憤るが、ナトゥナ諸島の漁師の生活も中国との強い経済的な結びつきで成り立っている現実がある。

 ナトゥナ諸島の特産品となっている高級魚ナポレオンフィッシュの売買は、その典型だ。記者が大ナトゥナ島から南西に約6キロのスダナウ島を訪ねたとき、沖合にあるいけすでは約3千匹が、青緑色のうろこを光らせて群れていた。いけすを管理する仲卸会社幹部のウィー・ハン・ユン(43)が餌のキビナゴを一つかみ放ると、魚たちが一斉に水面を割って水しぶきを上げた。

 ナポレオンフィッシュは中国で高級食材として珍重され、1匹当たり1万3千ルピア(約1万円)以上の値が付くという。ナトゥナ諸島から中国向けに出荷される魚の輸出額は年240億ルピア(約2億円)を超える。

 この海域に争いを持ち込んでいるのも、富をもたらしているのも、中国だ。この現実をどう捉えるのか。餌やりを終えたユンは、いけすの脇に腰を下ろし、こう答えた。「中国以上の買い手はいない。ビジネスはビジネス。そう割り切って考えるしかない」
(ナトゥナ諸島=半田尚子)

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国境を越えて隣国ウクライナへと侵攻し、街を、暮らしを破壊し、人々を虐殺する。ロシアの軍事行動に対して、これが現代に行われることか、と思う人が多いだろう。ロシアはなぜこうなのか。長年にわたりこの国の対外行動を見つめ、考えてきた岩下明裕さんに聞いた。

いわした・あきひろ
1962年生まれ。北海道大学教授。ロシア外交、境界研究。著書に「中・ロ国境4000キロ」「北方領土問題」「領土という病」など。

 ――ロシアはなぜ周辺国に力で踏み込むのでしょう。

 「40年近くロシアを見てきましたが、あの国にはミッション(使命)があるんですね。自分たちは偉大である、偉大な民族である、責任があると。周りに対しても自分たちが導かなければいけない、みたいな思い込みがある」

 「帝政ロシア時代も、共産党時代のソ連の時も、ロシア連邦になってからも、基本的に同じです。日本では大国主義はけしからんと言う。でもロシア人にそんなことを言っても、まず理解されない。当たり前じゃないか、みたいな感じ。それくらい染みついています。そうした思いをプーチン氏とその支持者が代表している。この責任と使命のもとで、お前たちウクライナを解放してやるんだと」

 ――やられる側にとってはたまりませんが。

 「邪悪に向かわせる連中がいるから救ってやると。実際にはそこまで言いませんが、そういう感じです」


 ――それは、何から何を救うのでしょう。

 ロシアが言う「解放」は侵略だ、という岩下さん。北方領土問題についても「淡い期待は捨ててください」と言います。


 「ウクライナは北大西洋条約機構(NATO)に入ろうなどと考えた。誤った西側の毒リンゴを食べたのだから解毒してやる、正しいスラブの仲間として抱擁したい、という気持ちでは」

 ――そのことと住宅や病院や学校を破壊していくのとは、まったくつじつまが合いませんが。

 「解放しているから、彼らにとってはいいんでしょう。解放するためには武力も辞さない」

 「たぶん、ロシアに言わせると、米国はもっとやっているではないかと。かつて中南米諸国などで反米的な政権を倒そうとしたし、アフガニスタンの空爆やイラクの解放もそう。偉大なるロシアが大義を掲げてやることに、お前らから口出しされる筋合いはないはずだ、と」

 ――うーん……。

 「日本人が直接体験した例で言えば、第2次大戦末期の千島列島へのソ連軍の侵攻です。あの時、ソ連は島を奪って占領した。明治期に日本とロシアが平和的に日本領だと定めた地域です。日本のいわゆる植民地でもないし、軍事的に獲得した土地でもありません」

 「日本が連合国に降伏する過程で、ソ連は一方的に攻め込み、力で境界を変えた。彼らの理屈では日本の軍国主義からの『解放』です。ミッションだから。実際は自分の土地ではないところに入ってきて、住んでいる日本人を追い出し、支配したわけです。日本人を軍国主義から解放したなら、島は日本人のものになるべきでしょう。解放とはどの口が言うか、です。解放後に、日本人を放逐し、ロシア人を移住させる。これは『解放』という名の侵略です」

 「だから、ウクライナの戦争を見て、私はソ連から島を奪われた経緯を思い出しました。元島民の方も、幼い頃に体験したことを思い出すと言っています」

 ――千島の経験と今のウクライナの状況が似ていると。

 「いや、比べものにならない。ウクライナの方がはるかにひどい。あんな虐殺はありませんでしたから。しかも、これをロシアは国としての戦争とは呼ばない」

 「ロシアの気分を代弁すれば、わが兄弟よ、なぜお前までが敵(西側)の陣営に入ろうとするのだ、ではないでしょうか。身内に背かれた憎しみを感じます。国と国との関係は、もう少しさばけたものであるべきなんですが」

 ――なぜ、今、なのですか。

 「かつてのソ連は世界政治の中でもっと力があった。ところが冷戦が終わった後のロシアは、やりたいことができない。私たちは『ソ連は負けた』と思うけれど、彼らは『ソ連は解体したが、我々ロシアは負けていない』と思っている。一緒に冷戦を終わらせたはずなのに、なぜロシアだけ西側にいじめられるのかと考えている」

 「西側の圧力にめげず、国力をだいぶ戻すことができた。だがウクライナは西側に行こうとしている。今、力を使ってでも引き留めなければ手遅れになる、ということでしょう」

 「もう少し長い目で見ると、現在起きていることは冷戦の初期段階に似ています。第2次大戦末期から1948、49年ごろまで。どこに東西の境界があるか、まだわからなかった時期です。社会主義と資本主義の、東側と西側の境界線ができて構造化されたのが冷戦でしょう。今は境界が新たに生まれる前の流動期です」


 ――プーチン氏は新たな境界を作ろうとしているわけですか。

 「今回いきなりではなく、少しずつ仕掛けてきました。2008年のジョージア(グルジア)戦争がまずそう。次が14年のウクライナからのクリミア併合。暴力的だったのは、ウクライナ東部の親ロシア派の武装勢力がドネツクとルハンスクの独立を宣言した時です。ロシアは事実上、軍を送ってこれを支援し、支配を確立しました。ここまでが予行演習だとすると、今回は全面的にポスト冷戦期の秩序に挑戦しています」

 ――この戦争の後、地域はどうなると見ますか。

 「10年ぐらいの期間で、そしてプーチン氏が当面、大統領に居続けることを前提にすると、ウクライナに東側の『人民共和国』と西側の『民主共和国』ができて境界が固着する。後者はNATOに入るかもしれませんが、『あれは偽ウクライナだ』とプーチン氏は主張する。そういうシナリオを私は考えています。冷戦期の東西ドイツと同じようなかたちです」
 「もともとロシアには、隣国との境界はとても危険なところだという発想がある。放っておくと敵が攻めてくるかもしれない。だからとりでとして固めるし、国境は遠ければ遠いほどいい。そのことも今回の背景にあると思います」

 ――それにしても、共産ソ連、いまのロシアと、体制が変わってもどうして専制的、非民主主義的なのでしょう。

 「その問いはどうでしょう。帝政時代もソ連時代も比較的自由な時代はありました。それと、今のロシア人に尋ねたら『ロシアにはロシアの民主主義がある、お前の言っている民主主義は意味が狭すぎる』と言うでしょうね」

 ――ところで、岩下さんは中ロの国境問題も研究してきました。中国の研究者はロシアをどう見ていると思いますか。

 「中国の専門家がロシアについて議論する場や、中ロの学者の会議に何度も同席しました。中国の中での議論は常に、こんなロシアは今しかない、必ず力を取り戻して復活する、今のうちにやれることをやらないといけない、です。エリツィン大統領の時でしたが、当たってしまいましたね」

 「中ロは2000年代初頭、かつて軍事衝突を繰り返した国境問題を解決しました。中国人の学者たちから『なぜ日本は北方領土問題を今解決しようとしないのか、こんな時期は二度と来ない、必ずロシアは立場を変える、今やらないと絶対にない』と何度も言われました。当時から彼らはロシアを甘く見ていなかった。中ロは蜜月と言われて、私もそう思うし、現在はほとんど準同盟といえる関係だけど、それでも根っこの部分に信頼関係はないと思いますね」
 ――ロシアは日本に対して3月、平和条約の交渉を継続しないと言ってきました。北方領土問題はどうなるのでしょう。

 「交渉の話をする状況ではないし、島の引き渡しうんぬんは今の戦争とは関係ありません」

 ――どういうことですか。

 「この問題は安倍晋三政権の時に終わっています。残念ですが、淡い期待は捨ててください。プーチン氏にすり寄って翻弄(ほんろう)された、安倍外交の失敗を真剣に反省することです」

 「あのとき日本は(1956年の日ソ共同宣言で引き渡しに同意した)2島でもいいという方向になりかけた。でもロシアは、引き渡し後の島に日米安保条約が適用されないことを保証しろと突きつけてきた。日米安保は、米軍が日本国内のどこでも展開できることが基本です。それに制限をつけろと。無理ですよね。下手をすると次は北海道を対象外にしろと要求しかねません」

 「色丹島にはロシア人3千人が住んでいて、そのまま日本に戻っていたとしたらどうなるか、想像して下さい。もしプーチン氏が『日本の統治が悪くてロシア人が迫害されている、彼らを守るために軍事行動をする』と言い出したら? 今回のウクライナがそうでしょう。恐ろしいシナリオです」

 ――どうすれば。

 「どうにもなりません。10年は今のままの状況を覚悟して、地域と元島民への支援を続けるしかないでしょう。残念ですが」
(聞き手・刀祢館正明)

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