
2022年09月





安倍晋三元首相を殺害したとして送検された山上徹也容疑者をモデルにした映画「REVOLUTION+1」が、国葬に合わせた26~29日に、東京や沖縄など全国13カ所で緊急上映される。永山則夫元死刑囚の心象風景を描いた「略称・連続射殺魔」で知られる足立正生さん(83)が監督を務めている。

英国在住でライターのブレイディみかこさんは、初の長編小説「両手にトカレフ」で、「子どもの貧困」を正面から描いた。作品の底流にあるのは「そろそろ貧困問題に本気で目を向けなければ、世界は変わらない」という強い危機感だ。
「ヒート・オア・イート(暖房か食事か、どちらかを選ばねばならないほどの生活苦)」
英国ブライトンで暮らすブレイディさんは、朝日新聞のコラム「欧州季評」(7月)で、光熱費や食料費の高騰が暮らしを直撃し、満足に食べられないほどの「貧困禍」が急速に広がる英国の状況を伝えた。
抜け落ちていた「14歳の少女ミア」
「両手にトカレフ」の主人公は、14歳の少女ミア。家族のために学食でパンを万引きし、依存症の母にかわって弟の世話をするヤングケアラーでもある。
ベストセラーとなった「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」では、「元・底辺中学校」に通うブレイディさんの息子や友人たちが、人種やジェンダーの多様性のなかで成長していく姿が生き生きと描かれた。
ただブレイディさんは、「『ぼくイエ』では、ミアのような子どもたちのことは抜け落ちていた」と振り返る。生活が苦しい人が数多く暮らす地区の「底辺託児所」で保育士として働いていたブレイディさん。ノンフィクションでは書けない深刻な実態がある、と言う。
「家庭の事情でクラブ活動もできない。親は心を病んでいて複数のきょうだいの世話をしている。『未来は大丈夫』じゃない子どもたちがたくさんいるのです」
「両手にトカレフ」では、大正時代に大逆罪に問われ獄中で自死した金子文子の過酷な少女時代が、ミアの物語と重ね合わせて書かれている。「100年の時をへても、日本と英国という距離をへだてていても、貧困を生きる子どもたちは同じ経験をしているのではないかと思います」
半径5メートルから国を動かす
貧困は、現代の日本でも深刻さを増している。
内閣府が昨年実施した全国調査では、ひとり親世帯の3割以上が、過去1年間に必要な食料が買えなかった経験がある、と答えた。困窮者への食料支援を待つ数百人の列のなかには、子どもの手を引いた母親が並んでいる。
ブレイディさんは、こうした子どもを含む貧困危機が十分に可視化、社会化されていないことを危惧する。生活苦や労働問題のニュースが大テーマとして扱われる英国に比べ、日本ではさらに貧困問題への関心が低調だと感じるそうだ。
「多様性、ダイバーシティーというテーマならメディアは取り上げるが、貧困問題はいまひとつ焦点になっていない。でも、貧困対策をもっと真剣に考えないと、生きていくのが難しい時代になると思います」
私たちになにができるのか。
ブレイディさんによると、インフレが猛威をふるう英国では、困窮する人に温かい食事を提供する民間のカフェが各地で活動し、多くのボランティアが参加しているという。自宅前に生活用品を並べ、困った人々に直接提供しようと個人で動き出す人も。地べたの相互扶助に立ち上がる人々の存在が、英国の底力、屋台骨だとブレイディさんは語る。
「国を動かすには、まず私たちが『半径5メートル以内』で立ち上がって、草の根レベルで子どもの貧困をなくすという意思を示すことが大切。そうなれば、政府や自治体も動かざるをえなくなると思います」(編集委員・清川卓史)







昨年11月に亡くなった歌舞伎俳優の二代目中村吉右衛門さんをしのぶ「秀山祭」の公演が今月、歌舞伎座で開かれています。70年以上にわたる俳優人生で、自身の思いを語る、多くの言葉を残しました。朝日新聞の記事をたどると、伝統芸能の担い手として、現代と切り結んできた、その歩みが浮かんできます。
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