
Drones Changed This Civil War, and Linked Rebels to the World
ミャンマーで軍事政権と戦っている抵抗勢力の最優秀の兵士の一人は、サンダルにショートパンツ姿だった。彼は武器を自慢げに披露しつつ、謝った。ほとんどバラバラの部品だったからだ。
その兵士シャンジー氏は、3Dプリンターで造形したプラスチックパネルを接着剤でくっつけていた。近くには、中国製の農業用ドローンから取り出した電装品が地面に並べられ、配線はまるで手術を待つかのようにむき出しになっていた。
プロペラが取り付けられた発泡スチロールの塊など、自家製ドローンを作るのに必要な他の部品も、木々の葉に囲われた二つの小屋に所狭しと並んでいた。ここは「カレンニー国民防衛隊(KNDF)」[Karenni Nationalities Defense Force]の武器庫と言ってもよいだろう。レーザーカッターは飛行制御ユニットを削り出している途中で停止していた。発電機が止まってしまったためだ。いつ電気が復旧するかは分からなかった。
寄せ集めにもかかわらず、抵抗軍のドローン部隊は、ミャンマー国内のパワーバランスをひっくり返すことに成功した。3年前に文民政権から実権を奪い取った軍は、国を取り戻すために戦っている何百もの市民軍よりもはるかに大きく、装備も整っている。また、軍事政権はロシア製戦闘機や中国製ミサイルを自由に使えるのだけれど。
絶望的なほど非対称な力関係にもかかわらず、抵抗勢力は、ネット上で入手可能な説明書と中国から取り寄せた部品だけで、この内戦を何とか持ちこたえている。使っている技術は、ウクライナやイエメン、スーダンの兵士にとっても、なじみのないものではないだろう。
民生品用の技術[consumer technology]に詰め込まれた各種の新機能は、世界中で紛争の様相を変えつつある。衛星通信スターリンクでインターネットが使えるし、3Dプリンターで部品を大量生産できる。しかし、その中でも、安価なドローンほど重要な製品はない。

2023年、ガザではハマスが安価なドローンを使い、監視が張り巡らされたイスラエルの検問所をあざむいた。シリアとイエメンでは、ドローンはミサイルとともに飛び、おかげで米軍は「500ドルのおもちゃ」を撃ち落とすために高価な防衛手段を使うかどうか、難しい決断を迫られている。ロシアでもウクライナでも、ドローンは新技術により、脇役から人間が誘導するミサイルへと変身した。
武力では劣勢に立つ側は、世界をまたにかけて、しばしば互いに学び合っている。ミャンマーのドローン操縦士たちは、ディスコード[Discord]やテレグラム[Telegram]といったチャットアプリ上のグループを頼り、固定翼ドローンの3Dプリンター用設計図をダウンロードしていると語る。また、位置情報が漏出しないよう、民生用ドローンのソフト改変の知見も得ている。
趣味の世界では本来用途だった、動画撮影機能も活用されている。ウクライナでもミャンマーでも、戦闘の動画は胸がどきどきするような音楽を添えてソーシャルメディアで拡散されており、士気を高めて資金を集めるのに一役買っている。
「こうした事例は指数関数的に増えており、あらゆるところで起きている」とシンクタンク「新アメリカ安全保障センター(CNAS)」のフェローで、ドローン戦争を研究しているサミュエル・ベンデット氏は言う。「YouTubeで組み立て方を学び、テレグラムで戦術や訓練のヒントを得ることができるのだ」

リーダーは「3D」
抵抗勢力のドローン部隊トップは、「3D」というコードネームで呼ばれている。ドローンの部品を3Dプリンターで製造するのに成功したからだ。典型的な兵士とは違うタイプかもしれない。コンピューターテクノロジーの学位を持つ彼は、大学時代に初めて3Dプリンターを組み立てたときのことを振り返った。
「それほど難しくはなかった」
抵抗運動に参加してから、スキルを生かそうとまず、3Dプリンターでライフルの製造を試みた。それがうまくいかなかったため、ドローンに目を向けた。世界のほかの地域で起きている戦争を一変させている、という記事を読んだからだ。
シンクタンク「国際危機グループ(ICG)」のリチャード・ホーシー氏は語る。「彼らは技術を使う破壊者タイプ[tech disrupter-type]の思考様式を持っていた。そして、イノベーションがたくさん起きた」
3Dが部隊創設に乗り出したとき、訓練のマニュアルはなかった。そこで、彼はミャンマー各地で同様の部隊を立ち上げている若い民間人たちに相談した。デジタルでつながったミャンマー育ちの若者たちは、2021年にクーデターが起き、抗議デモが容赦なく弾圧された後、戦うためにジャングルに身を潜めた。
3Dのチームにいるパイロット10人のうち、クーデター前にドローンを操縦したことのある者はいなかったが、彼らはオンラインのチャットルームを徹底的に調べ、殺虫剤散布用のドローンをより致命的な用途、つまり兵器に転用する方法を学んだ。
3Dは言う。「インターネットはとても便利だ。その気さえあれば、ウクライナやパレスチナ、シリアなど、あらゆる場所の人々と話すことができる」
最近、3Dは「爆買い[shopping spree]」をした。ある問題に直面したため、ウクライナの最前線の塹壕で完成された解決策を求めてのことだった。問題というのは、信号を遮断してドローンを無力化してしまう、ロシア製の妨害電波発信機のことだ。
3Dがドローン軍を結成してから数カ月も経たないうちに、軍事政権は中国とロシアの妨害技術を用いて、ドローン誘導に使うGPS信号にスクランブルをかけ始めた。
3Dは巻き返しを探っていた。抵抗勢力の戦闘員を追跡するために国軍もドローンを飛ばす。その際には、妨害電波を中断しなければならない。そのすきに、自分たちのドローン編隊を送りこむことができるはずだ。
それに、新型の一人称視点ドローン[first-person-view drones](機体視点の映像を見ながら操縦するタイプ、略称FPV)であれば、守りを固められても突破できる可能性がある。趣味のレース用機体を転用したFPVは、GPSの誘導ではなく人間が操縦するため、妨害電波の影響を受けにくい。時には、発せられる妨害電波を避けるように操縦することもできるだろう。

戦闘機が頭上に
戦闘も犠牲者も後を絶たない。
3月20日、抵抗軍パイロットのスターであるシャンジー氏は、前線でドローンを飛ばしていた。突然、もっとずっと恐ろしい飛行機、すなわち軍事政権の戦闘機が頭上で鋭い音を立てた。3Dが後で説明したところによると、爆弾が直撃し、シャンジー氏は戦死した。22歳だった。