
続発した大規模山林火災は何かを「警告」しているのでしょうか。森林に携わる多くの人たちの声を聞き、論文にまとめたこともある東京大学先端科学技術研究センターの森章教授は、戦後の森林政策のあり方を考え直すときに来ていると指摘します。
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今回の一連の大規模森林火災は温暖化の影響が大きいと安直には言えません。海外では温暖化が強度のかんばつを引き起こしている地域は多いが、日本には当てはまりません。今年はたまたま乾燥と強風が重なって起きたのであり、このような条件が毎年続くとは考えにくい。
むしろ今回の火災は、森林管理の問題を警告しています。日本は戦後、木材生産のために過剰に自然林をスギやヒノキの林に変えてしまいました。荒れて切り出せない状態になっている所が多く、林業従事者も減り高齢化しています。管理が不十分で枝や落ち葉が累積している所に人為的な火がつき、風で広がるということは今後もありえます。
焼け跡を放置していても長期的には自然に森林に戻りますが、岩手県大船渡市のような大規模に延焼した後は早急に積極的な再造林が必要です。梅雨や台風の季節が来ると、雨滴が直接、土壌に当たって削られ、土砂崩れを起こし、川や海に流れて漁業にも影響するかもしれません。陸と海の連環はまだまだ科学的にも未知の領域ですが、森林だけに焦点を当てて考えるのではなく、広い視野が必要です。
得策でない砂防ダム
そうした影響という意味ではコンクリートの砂防ダムを造るのは得策ではありません。環境へ影響も生じます。砂防ダムがなくても、雨で土壌が侵食される危険性が高いのは最初の数年だけで、その間に植物が茂り始め、侵食は止まる。
森林をどう再生するかは、所有者や近隣住民だけでなく漁業者も交え、費用負担を含め熟考を要します。木材生産以外の便益、たとえば土砂流失や災害の防止、水の浄化など、その恩恵の多くを森林所有者以外も享受しています。
木材生産に使う場所以外は本来の多様な木が生えている状態に戻したほうがいい。木の種類が多様化すると、根の張りが浅いものと深い種類があることで土壌の締まりが良くなります。私の研究では炭素吸収量も良くなる。教育やレクリエーションの場としても価値が高まります。
森林税使途、考えるべきとき
林野庁も、全国の人工林の相当量を自然度の高い森林に戻す方針を立てていますが、財源や方策がいまだ明確ではありません。補助金を活用したいが、植える木の種類が限定されていたり密度が決められていたりします。そのルールは環境にどう効果があるか科学的根拠が薄い。各地で小規模に、企業などが出資して自然な林に戻す活動をしているのが現状です。
国は昨年度から森林環境税を取っています。自然林への転換の財源に充ててはどうか。これまで森林の研究者、政策立案・運営者、現場の実務者らの関係が必ずしも密ではありませんでした。一緒に使途を考えるべきです。