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 アメリカとイスラエルが始めたイランへの攻撃によって、中東では多くの市民が巻き添えとなり、死者はすでに2千人を超えています。アメリカの市民はこの事態をどう捉えているのか。多数のメディアに作品を掲載する風刺漫画家のクレイ・ジョーンズ氏は、トランプ大統領の息子の親指にできたマメを題材に現状を描きました。そこに込めた思いとは

 ――複数の世論調査で、過半数の市民がイランへの攻撃に反対すると回答しています。この結果をどう見ますか。

 多くはアメリカが新たな戦争を始めることを望んでおらず、今回の攻撃を否定的に捉えています。トランプ氏がこれまで「戦争を起こさない」と語ってきたこともあって、突然の攻撃開始に対する反発がより強くなっています。

 2003年にイラク戦争が始まった時には、世論は当初、戦争を支持していましたが、長期化するにつれて反対の声は大きくなりました。今回のイラン攻撃では、最初から否定的な見方が強いことが特徴です。反対する声はさらに高まっていくでしょう。

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米ニューヨーク中心部のタイムズスクエアで2026年2月28日、米国旗を映したスクリーンの前で、米国とイスラエルによるイランへの攻撃に抗議する人

 ――大都市では反戦デモがありましたが、アメリカ社会全体では抗議の声はそれほど大きくないようにも見えます。

 戦争が起きていることを知っていても、多くの人々はまだその痛みを実感していない状況です。私たちが攻撃にさらされているわけではないからです。

 家族が兵士として現地にいるような状況でない限り、今のところ最大の苦痛はガソリン価格の高騰くらいでしょう。現時点では、4千人以上のアメリカ兵が死亡したイラク戦争の局面とは異なります。

「また新たな戦争」 ホラー映画と同じ

 ――アメリカは攻撃の当事国です。人々や社会に大きな動揺が見られないのは不思議にも思えます。

 歴史の中で、アメリカは常に何らかの戦争と関わってきました。完全に平和だったといえる時代がほとんどないほどです。第2次世界大戦後にずっと戦争がなかった日本とは異なります。

 今回の攻撃も、「また戦争が始まった」と受け止められている側面があります。ホラー映画をたくさん見すぎて怖くなくなるのと同じように、アメリカ人は戦争が起きることに慣れてしまっているようです。

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米ニューヨークで2026年3月7日、米国とイスラエルによるイランへの攻撃に抗議してデモをする人たち

 ――外国と交戦状態になることに恐怖はないのですか。

 過去にたくさんの戦争を繰り返してきましたが、アメリカ本土を攻撃されることがほとんどありませんでした。他国に対して恐ろしい行為を行い、ひどい戦争を繰り広げても、アメリカ市民が犠牲になることはなかったことが影響しているのだと思います。

息子が戦地へ送られたら トランプ氏は強気発言できるか

 ――あなたはアメリカによる対イラン先制攻撃のあと、トランプ氏が米軍兵士の遺族に声をかける風刺漫画を発表しました。テレビゲームのしすぎで息子のバロン氏の親指にマメができたとトランプ氏が語り、「お気持ちはよくわかります」と遺族に話す内容です。この漫画を通じて描きたかったことは何ですか。

 トランプ氏が他人の痛みに共感できない人物だということです。彼は、ビデオゲームで指にマメができた息子には共感できても、戦争で息子を失った人には共感できないだろうということです。それが私の批判です。

 トランプ氏はこの戦争で自分の家族が脅威にさらされることはありません。彼の子供たちが戦争に志願することもないでしょう。もし末っ子で20歳のバロン氏が兵士として送られていたら、トランプ氏は同じ強気の発言をするでしょうか。戦争が続けば、国民への影響は大きくなります。苦痛と犠牲の大きさを理解すべきです。

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アメリカのイラン攻撃後にクレイ・ジョーンズ氏が発表した風刺漫画。アメリカ兵の遺族に、トランプ大統領が「お気持ちはよくわかります。(私の息子の)バロンはプレイステーション2で『コール・オブ・デューティー』をプレーして、親指にマメができてしまいました」と語りかけている。コール・オブ・デューティーは戦争を題材にしたゲーム

 ――ネット上では、バロン氏を兵士として中東に送るよう求める声も広がっています。こうした動きをどう見ますか。

 大統領の息子が他の若者と同じように戦争に行く姿を見たいと思う人たちがいることは事実です。しかし、現在のアメリカに徴兵制はありません。しかも、バロン氏は学生です。多くの人々は、強引に彼を徴兵して兵士にすべきだとは本気で考えてはいないと思います。

 ――米国のイラン攻撃についてあなた自身はどう思いますか。

 私が考えるのは、この攻撃は間違っているということです。私たちはイランをより危険な国にしてしまうでしょう。アメリカと敵対する理由をさらに増やし、私たちは今後もその脅威と向き合わなくてはいけません。とてつもない混乱を招くのではないかと心配しています。そしていずれは、愛する人の命が危険にさらされたり、経済が打撃を受けたりする形で、私たちに重くのしかかるでしょう。