香港郊野遊行・續集

香港のハイキングコース、街歩きのメモです。

朝日新聞

迫る上限、28年度「満杯」のおそれも 原発の使用済み核燃料(朝日新聞)

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 原発を動かした後に生じる使用済み核燃料が各地で増え、燃料プールなどでの保存可能量の上限に近づいている。国内最多の3カ所7基の原発を動かす関西電力は状況が厳しく、このままいくと2028年度にも一部の原発で満杯となる恐れもある。

 原子炉から取り出された使用済み核燃料は熱を持ち、放射線量が高い。そのため、近くにある燃料プールの水の中につけ、冷やしつつ放射線を遮るかたちで保管されている。

 電力大手でつくる電気事業連合会が2月に出した、25年末時点の実績によると、廃炉が決まっている東京電力福島第一などを含む国内の17カ所の原発にある使用済み核燃料は、すべての燃料プールの保存可能量の78%に達した。

 原発ごとにみると、90%超が福島第一、関電大飯(福井)、80%超は関電の高浜(同)と美浜(同)、九州電力の川内(鹿児島)と玄海(佐賀)、東電柏崎刈羽(新潟)など8原発だった。

 約5年単純に運転したと仮定した場合、大飯、高浜、柏崎刈羽の3カ所が上限に達するとした。

 このうち、柏崎刈羽の分については、冷めた使用済み核燃料を原発の敷地外で一時的に保管する「中間貯蔵施設」が青森県むつ市にあり、東電はそこへの搬出を始めている。

 ただ青森県の宮下宗一郎知事は3月31日、中間貯蔵施設からの最終的な受け入れ先となる同県六ケ所村の再処理工場の完成が遅れているとして、現時点では26年度の使用済み核燃料の受け入れを容認しないとの考えを示した。

 関電は、搬出ができずにいる。関電は、冷めた使用済み核燃料を、水を使わずに保管できる「乾式貯蔵施設」を3原発内で計画中だが、完成していない。このまま原発を運転しつづけると、高浜で28年度ごろ、美浜で29年度ごろ、大飯が30年度には、施設が満杯になり、運転できなくなるとしている。

 約10年前の電事連の15年9月末のデータと比べると、関電の大飯、高浜、美浜の3原発はいずれも、保存可能量に対する実際の貯蔵量が20ポイント以上上がっている。増加幅は17カ所の中で最も高かった。

 各地でこれほどたまっているのは、使用済み燃料を再利用しようとする国の計画が順調に進んでいないためだ。

 国や電事連は、使用済み核燃料を、六ケ所村の再処理工場に運び、再び原発で使えるようにしたいとする。だが、工場は93年の着工後、完成の延期を重ねている。行き先がなくなり「目詰まり」が起きている状態だ。

 関電は28年度からその工場に、福井の原発の使用済み核燃料を運び入れる計画を立てているが、工場の完成や処理の開始が少しでも遅れれば、その分だけ影響が出る。

 関電はまた、27年度から再処理を委託するフランスの原子力企業へ搬出するほか、30年ごろには福井県外に中間貯蔵施設をつくって操業させるとしている。

 山口県上関町で中国電力が計画している施設が有力視されているが、周辺自治体などから反発が起きている。 

息子が戦地にいたらトランプは強気発言できるか 風刺漫画家の問い(朝日新聞)

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 アメリカとイスラエルが始めたイランへの攻撃によって、中東では多くの市民が巻き添えとなり、死者はすでに2千人を超えています。アメリカの市民はこの事態をどう捉えているのか。多数のメディアに作品を掲載する風刺漫画家のクレイ・ジョーンズ氏は、トランプ大統領の息子の親指にできたマメを題材に現状を描きました。そこに込めた思いとは

 ――複数の世論調査で、過半数の市民がイランへの攻撃に反対すると回答しています。この結果をどう見ますか。

 多くはアメリカが新たな戦争を始めることを望んでおらず、今回の攻撃を否定的に捉えています。トランプ氏がこれまで「戦争を起こさない」と語ってきたこともあって、突然の攻撃開始に対する反発がより強くなっています。

 2003年にイラク戦争が始まった時には、世論は当初、戦争を支持していましたが、長期化するにつれて反対の声は大きくなりました。今回のイラン攻撃では、最初から否定的な見方が強いことが特徴です。反対する声はさらに高まっていくでしょう。

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米ニューヨーク中心部のタイムズスクエアで2026年2月28日、米国旗を映したスクリーンの前で、米国とイスラエルによるイランへの攻撃に抗議する人

 ――大都市では反戦デモがありましたが、アメリカ社会全体では抗議の声はそれほど大きくないようにも見えます。

 戦争が起きていることを知っていても、多くの人々はまだその痛みを実感していない状況です。私たちが攻撃にさらされているわけではないからです。

 家族が兵士として現地にいるような状況でない限り、今のところ最大の苦痛はガソリン価格の高騰くらいでしょう。現時点では、4千人以上のアメリカ兵が死亡したイラク戦争の局面とは異なります。

「また新たな戦争」 ホラー映画と同じ

 ――アメリカは攻撃の当事国です。人々や社会に大きな動揺が見られないのは不思議にも思えます。

 歴史の中で、アメリカは常に何らかの戦争と関わってきました。完全に平和だったといえる時代がほとんどないほどです。第2次世界大戦後にずっと戦争がなかった日本とは異なります。

 今回の攻撃も、「また戦争が始まった」と受け止められている側面があります。ホラー映画をたくさん見すぎて怖くなくなるのと同じように、アメリカ人は戦争が起きることに慣れてしまっているようです。

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米ニューヨークで2026年3月7日、米国とイスラエルによるイランへの攻撃に抗議してデモをする人たち

 ――外国と交戦状態になることに恐怖はないのですか。

 過去にたくさんの戦争を繰り返してきましたが、アメリカ本土を攻撃されることがほとんどありませんでした。他国に対して恐ろしい行為を行い、ひどい戦争を繰り広げても、アメリカ市民が犠牲になることはなかったことが影響しているのだと思います。

息子が戦地へ送られたら トランプ氏は強気発言できるか

 ――あなたはアメリカによる対イラン先制攻撃のあと、トランプ氏が米軍兵士の遺族に声をかける風刺漫画を発表しました。テレビゲームのしすぎで息子のバロン氏の親指にマメができたとトランプ氏が語り、「お気持ちはよくわかります」と遺族に話す内容です。この漫画を通じて描きたかったことは何ですか。

 トランプ氏が他人の痛みに共感できない人物だということです。彼は、ビデオゲームで指にマメができた息子には共感できても、戦争で息子を失った人には共感できないだろうということです。それが私の批判です。

 トランプ氏はこの戦争で自分の家族が脅威にさらされることはありません。彼の子供たちが戦争に志願することもないでしょう。もし末っ子で20歳のバロン氏が兵士として送られていたら、トランプ氏は同じ強気の発言をするでしょうか。戦争が続けば、国民への影響は大きくなります。苦痛と犠牲の大きさを理解すべきです。

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アメリカのイラン攻撃後にクレイ・ジョーンズ氏が発表した風刺漫画。アメリカ兵の遺族に、トランプ大統領が「お気持ちはよくわかります。(私の息子の)バロンはプレイステーション2で『コール・オブ・デューティー』をプレーして、親指にマメができてしまいました」と語りかけている。コール・オブ・デューティーは戦争を題材にしたゲーム

 ――ネット上では、バロン氏を兵士として中東に送るよう求める声も広がっています。こうした動きをどう見ますか。

 大統領の息子が他の若者と同じように戦争に行く姿を見たいと思う人たちがいることは事実です。しかし、現在のアメリカに徴兵制はありません。しかも、バロン氏は学生です。多くの人々は、強引に彼を徴兵して兵士にすべきだとは本気で考えてはいないと思います。

 ――米国のイラン攻撃についてあなた自身はどう思いますか。

 私が考えるのは、この攻撃は間違っているということです。私たちはイランをより危険な国にしてしまうでしょう。アメリカと敵対する理由をさらに増やし、私たちは今後もその脅威と向き合わなくてはいけません。とてつもない混乱を招くのではないかと心配しています。そしていずれは、愛する人の命が危険にさらされたり、経済が打撃を受けたりする形で、私たちに重くのしかかるでしょう。 

福島第一原発、示されぬ廃炉の姿 無謀な目標維持は「地元への背信」(朝日新聞)

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「1F廃炉の先研究会」松岡俊二代表に聞く

 未曽有の過酷事故から15年――。3基の原子炉がメルトダウンした東京電力福島第一原発の廃炉は最大の難題とも言えるが、なかなか進展しない。政府と東電は2051年までの廃炉完了を掲げるが、多くの専門家が非現実的と指摘する。燃料デブリの処分先も、廃炉の最終形も、定まっていない。

 早稲田大学大学院の松岡俊二教授は、パンドラの箱とも言えるこの問題で試されているのは、社会の意思決定のあり方であり、この国の民主主義そのものだと語る。先送りしてきた宿題に、私たちは向き合う覚悟があるのか――松岡教授は自身と社会に問いかけている。

燃料デブリ取り出しに「70~170年」

 ――政府と東京電力は、福島第一原発(1F)の「2051年までの廃炉完了」を掲げています。

 「現実的に不可能です。多くの専門家があり得ないと見ており、原子力規制委員会の田中俊一・元委員長も『できない』と指摘しています。廃炉の助言をする原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)の更田豊志廃炉総括監すら『もともと困難だ』と言っています。にもかかわらず無理筋の『旗』を降ろさないのは、無責任です」

 ――「2051年」は、事故後間もない11年12月に政府が工程表で示しました。想定では21年に溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)の取り出しに着手する計画でしたが、開始は3年遅れました。

 「開始と言っても、推計880トンのデブリのうち試験的に約0.9グラムを採取しただけ。山登りで言えば、まだふもとで準備体操と登り方の検討をしている段階です」

 「『2051年』の根拠とされたのは、1979年の米国スリーマイル島(TMI)原発事故で、11年後に溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)をほぼ取り出した事例です。1Fのデブリは3基にあるから、3倍の30~40年かかる――そんな粗い推計でした。ただ、TMIは原子炉圧力容器に水を張り放射線を遮った状態で作業できました。1Fではデブリが圧力容器の底を突き破り広範囲に広がっている。人類が経験したことのない事故炉で、難度は比較になりません」

 ――デブリ取り出しには「70~170年かかる」と独自に試算しています。

 「私の試算はあくまでTMIの実績からの算出なので、それでも極めて楽観的な数字です。第一『880トン』も推計で、実際にはもっと多いかもしれない」

インパール作戦と同じ過ち

 ――そもそも「廃炉」とは何を指すのか、政府も東電も明確にしていません。

 「更地にするのか、一部施設が残っても廃炉完了と見なすのか、ゴールはあいまいです。当初の11年版の工程表にあった『原子炉施設の解体』という記述は徐々に不明確になり、15年版からは事実上消えて『30~40年後の廃止措置終了を目標に』などという歯切れの悪い表現だけが残っています」

 「福島県民の多くは、更地になって地元に返還されるのが廃炉だと今も考えているでしょう。エンドステート(最終形)を明確にせず、無謀な目標の軌道修正もしない――これでは福島は未来像をいつまでも描けません」

 「このままでは、51年の間近になって『やはり無理でした』となるのは目に見えている。私の目には、実情から目を背け机上の作戦に固執した日本軍のノモンハンやインパールでの過ちの繰り返しに映ります」

 ――取り出したデブリや放射性廃棄物の行き先も大きな課題です。

 「通常の原発から出る使用済み燃料は、再処理後にガラス固化体にして最終処分する枠組みがありますが、事故由来のデブリは想定外です。福島県はデブリを含む放射性廃棄物をすべて県外で最終処分するよう求めています。しかし最新19年版の工程表は、デブリは1F内の設備で乾式で保管すると記している。量や期間には触れていませんが、地元からすれば大きな疑念を呼ぶものです。誰の責任で、どこに持っていくのか、どう保管するのか、あいまいなまま『取り出す』と言い続けているのが現状です」

 「TMIでは、アイダホ州に運ぶことを決めてからデブリの取り出しを始めました。原発敷地内での半永久的な保管になるのではと地元住民が懸念したため、エネルギー省と原子力規制委が覚書を締結し責任体制を明確化したのです」

 ――責任の所在が見えにくいのは、国と東電、NDFのもたれ合い構造が原因だと指摘していますね。

 「1Fの廃炉は国が大方針を決め、NDFが年度ごとの技術戦略プランをつくり、これに沿って東電が作業を進めています。これを改め、東電が責任を持って戦略を立て、NDFは資金管理に徹し、原子力規制委員会が監視するという透明な体制にすべきです」

 「23年に処理水の放出を始める際、東電は『政府の判断』と繰り返しました。これではいつまでも社会の理解や信頼は得られません」

 「米国の経営史家アルフレッド・チャンドラーは『戦略が組織を規定する』と述べていますが、福島の現状は逆です」

デブリと除染土、一体管理も検討を

 ――松岡さんが代表を務める「1F廃炉の先研究会」は今月、1Fに隣接する中間貯蔵施設に保管される除染土や焼却灰などを、デブリなど1Fからの放射性廃棄物と共に総合的に管理する可能性も検討すべきだと提言しました。

 「言いにくいことですが、1F廃炉は100年単位の時間軸で考えるべき作業です。処理方法も決まっていない現状で高線量のデブリを取り出しても、持っていく場所はない。一方、東京ドーム11杯分の約1400万立方メートルに及ぶ除染土などは県外での最終処分が決まっていますが、これも社会的受容度は低く、困難が予想されます。4分の3の量を占める、放射性物質濃度が1キロあたり8千ベクレル以下の除染土は公共事業で再生利用することになっていますが、それすら受け入れ先の抵抗感が強く、進んでいません」

 「これは研究会ではなく個人としての見解ですが、デブリなど1Fの廃棄物と高濃度の除染土などを、1F敷地内の保管施設で安全に一体管理することを、現実的な選択肢として柔軟に考えるべきではないでしょうか」

 ――しかし、除染土の2045年までの県外最終処分は法律で決められたものです。デブリの事実上の長期保管も、福島からすればとても容認できないでしょう。

 「『除染土の最終処分期限45年』も『51年廃炉完了』も、東日本大震災と原発事故で混乱する政治社会状況の下で、ごく一部の人々が決めたものです。この15年間で新たに分かってきた事実や知見を踏まえ、立場や世代を超えて、様々なステークホルダー(利害関係者)が開かれた対話と議論を重ねるべき時期にきています」

 「無理な旗を掲げ続けることこそ、最大のリスクです。また、言いっ放しで『実現は不可能』『無謀な目標だ』と指摘するだけなら誰でもできる。それも無責任です。デブリや除染土の最終処分の問題は『パンドラの箱』で、誰も触れたくないでしょうが、目をそらし続けることはできません。関係者は、自分の現役時代あるいは生きている間はやり過ごせると考えているかもしれません。でも、それこそ福島の人たちへの最大の背信でしょう」

 「デブリを取り出し、安定的に保管、監視できる状態をひとまず『中間目標』と設定し、その具体的道筋を、福島と日本中の幅広い人々が共に考え議論して決めていく――それが最も社会的納得感を得られる方法ではないでしょうか。デブリと除染土の一体管理はあくまで議論のたたき台としての一案です」

政策決定のイノベーションを

 ――1F廃炉への社会的関心ももっと高める必要がありますね。

 「廃炉費用は現在8兆円とされていますが、デブリを最終処分する費用は含まれていません。電気料金という形での国民負担が膨らむのは確実なのに、特に1Fの電力消費地だった首都圏の人々は、自分には関係がないと考える対象に無関心でいる『合理的な無知』にとらわれているように見えます。これを『合理的な関心』に変えるためには、1F廃炉法を制定し、国会審議で廃炉問題を『見える化』すべきです。責任主体と役割の明確化や透明性という点でも、立法化は必要と思います。現在、福島県浜通りにある中間貯蔵事業情報センターや廃炉資料館を東京都内に設け、我がことと考えてもらうことも必要でしょう」

 「重要なのは『社会の中の廃炉』という視点・アプローチです。技術面に加え、政策決定・遂行の面でもイノベーションを起こさなければ、廃炉問題の進展はあり得ません。これは、地域や世代間での対立をはらむ難題、例えば財政や社会保障の課題に取り組む際にも当てはまります。その意味では、1Fの廃炉問題は、日本の民主主義の今後を占う試金石なのです」

まつおか・しゅんじ 1957年生まれ。広島大教授などを経て早稲田大大学院アジア太平洋研究科教授。専門は環境経済・政策学。福島の住民や研究者らによる「1F廃炉の先研究会」代表。官僚や東電社員、避難者、地域住民らと福島第一原発の将来像を考える「1F地域塾」を主宰。 

トランプ台頭招いた米民主党の失敗は 左派論客ジュディス氏に聞く(朝日新聞より)

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 米国のリベラル勢力である民主党はなぜ失敗し、トランプ大統領を2度も当選させるという結果を招いたのか。民主党の問題点を左派の立場から鋭くえぐる近著が話題を呼んだ著述家ジョン・ジュディス氏に聞いた。

 ――今はトランプ氏と共和党の固い支持基盤となっている米ウェストバージニア州の炭鉱地帯を訪れた時、昔は多くの家でキリストと民主党のケネディ大統領の肖像画が飾られていたと聞きました。以前は労働者やキリスト教徒に強く支持されていた民主党の変化に驚いた覚えがあります。背景は何ですか。

 1970年代が重要な節目です。それまでは、30年代にニューディール政策を進めた民主党のルーズベルト大統領を強く支持していた労働者層が「ニューディール連合」を築いていました。これが崩れていったのです。人種差別の是正を目指した公民権運動に対し、反発した南部の白人労働者層が共和党へ移りました。この白人層には保守的なキリスト教福音派も多く、ベトナム反戦運動などを通じて高揚した(都市部の若者が体制や保守的な考えに対抗した)「カウンターカルチャー(対抗文化)」の動きにも反発していました。 
労働運動の退潮も始まりました。民主党はウォール街(金融界)やハリウッド(娯楽業界)のエリートや献金者との結びつきを強め、労働者に打撃を与える自由貿易や緩やかな移民政策へ傾きました。94年、民主党のクリントン大統領の下で北米自由貿易協定(NAFTA)が発効し、その年の中間選挙で共和党が圧勝したことは、公民権運動や貿易、社会・文化問題を巡って労働者層が不満を募らせていたことの象徴でした。

 ――2期務めたオバマ大統領や、トランプ氏を下したバイデン大統領は一時的にせよ、党勢を回復したのではないですか。

 オバマ氏の経済政策は新自由主義的で、金融界の献金者には配慮する一方、労働運動の衰退による支持基盤の溶解という問題には対処しませんでした。バイデン氏は、インフレと移民規制という課題で失敗しました。

 人種や性が関わる社会・文化問題でも民主党は近年、極端な方向に進んでいました。例えば、2024年の大統領選で焦点になったトランスジェンダーの問題があります。私はトランスジェンダーの人への差別は許されないと考えますが、未成年の子どもが手術を受けられるようにすべきだという意見には賛成しません。こうした問題が極めて重大だと働きかけたロビー団体があり、民主党がそうした運動と同一視されたことで、共和党に効果的な攻撃材料を与えました。

マムダニ氏の勝利が示すものは

 ――労働者層に注目が集まる一方、民主党の支持者が多い都市部の大卒有権者層が見過ごされてしまっている面はありませんか。

 民主党の課題は、ジェンダーや人種、移民といった社会課題への見方が、都市部の極めて高学歴な少数の活動家的グループによって決められてしまう傾向があることです。こうした極端な見方は、大卒有権者の間でも必ずしも人気があるわけではありません。もし民主党が国政レベルの選挙で勝ちたいのであれば、こうした活動家的な要素を捨てる必要があります。この部分をあきらめたとしても、大卒有権者層の要望に応えることはできます。

 ――「民主社会主義者」を自称するインド系のマムダニ氏がニューヨーク市長に就いたことをどう考えますか。

 彼の選挙運動を見に行きましたが、従来は政治に関心が薄かった多様な若年層を動員していました。社会・文化問題からは距離を置き、徹底的に経済・物価問題に焦点を当てていました。ニューヨーク以外の保守的な中西部や南部でそのまま通用するとは思えませんが、今後の民主党にも重要な示唆を与えるものです。民主党は、経済問題では(格差是正のために積極的に富の再分配を進める)左派の立場から、社会・文化問題では(性が関わる問題などで過激と受け取られる主張から距離を置き)右派との中間的な立場から戦うべきなのです。

 ――今年の中間選挙や28年の大統領選に向け、民主党の行方をどのように見ていますか。

 足元の物価状況や経済格差を見ても、中間選挙では民主党に大きな優位があると見ています。トランプ氏は誰にも制御できない状態に陥っており、彼がコロナ下の混乱を経て20年の大統領選で落選したように、共和党には不利に働きます。大統領選は予備選まで予測が難しいですが、何人かの州知事は有力な民主党候補になるでしょう。
 ただ、私もこれまでトランプ氏の行動を過小評価し、見誤り続けてきました。20年の大統領選で負けたのに「選挙が盗まれた」と主張するとか、米連邦議会議事堂襲撃事件が起きるといったことは予想すらしていませんでした。「中間選挙が民主党に有利」などと言っていられるのは選挙が普通に実施されることが前提ですが、米国の民主主義が非常に危険な時代にあることにも留意が必要です。

John Judis
米誌ニュー・リパブリックなどで活躍。2023年の著書「アメリカ民主党 失敗の本質」(2月に邦訳出版)は米紙ウォールストリート・ジャーナルで「民主党員の必読書」と評された。
 

息を吐くようにうそをつく 米大統領の長広舌は1時間48分(朝日新聞より)

論説委員コラム「序破急」 坂尻信義

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 読んでいて、気分が悪くなった。トランプ米大統領の2月の一般教書演説は、史上最長だった。史上最悪の内容でもあったはずだ。気力を振り絞り、動画も見た。この人物が世界最大の権力を握っていることが怖くなった。

 日本で「一般教書」と訳されることが多い「State of the Union」は、米国の憲法第2条3項にある「大統領は随時、合衆国(Union)の現状(State)についての情報を議会に報告しなければならず……」との規定にもとづく。年初におこなわれることが定着した。

 しかし、トランプ氏が延々と繰り出した単語で1万語を超える言葉は、虚偽や虚勢、誇張の羅列だった。

 就任から10カ月で「八つの戦争を終わらせた」。パキスタンとインドは「核戦争に発展しかねなかった。私が関与していなかったらパキスタンの首相は死んでいた」。イスラエルとイランの戦争も終わらせたと胸を張った。

 処方薬の価格を世界最低の水準に引き下げたのだという。値下げ率は「300%、400%、500%、600%、いやもっとだ」。100%を超える値下げは理論上、消費者が薬を求めると金銭を受け取ることを意味する。

 息を吐くようにうそをつく。ためらいも恥じらいも感じられない。

 ワシントンで政権の動きを追う元敏腕記者の米国人アナリストは「大統領に怒られるのが怖くて、誰も何も言えないのではない。とりまきは大統領のうそを何とも思っていない」と嘆く。

 同時多発テロの翌2002年の一般教書で、ブッシュ元大統領は北朝鮮、イラン、イラクを「悪の枢軸」と呼び、米国は証拠を捏造してイラクに侵攻した。北朝鮮はこの挑発を口実に核開発を進め、核弾頭を持つに至った。オバマ元大統領は「核なき世界」を唱えた09年のプラハ演説を一般教書で繰り返すことはなかった。バイデン前大統領は24年の一般教書で「米国が連帯し、必要な兵器を供与すればウクライナはプーチンを止めることができる」と大見得を切る。再選をあきらめきれずに引き際を誤り、トランプ氏の再選を招いた。

 一般教書には失望の連続だった。でも今年のひどさは別格だ。そして、イランへの攻撃がはじまった。

ミドルパワーは米中の間で存続できる? N.Y.Timesコラム(朝日新聞)

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ロス・ドゥサット

 ドナルド・トランプが大統領の1期目に暴れ回っていたとき、自由主義諸国のリーダーの座は、リベラル陣営の喝采のもと、ドイツのアンゲラ・メルケルに移った。彼女は国際主義という美徳の体現者、つまり慎重で寛容、外交的で多国間主義、何よりも専門性を重んじる存在と位置づけられた。

 やがて、トランプが退任し、メルケルも退任するや、ドイツにおける彼女のリーダーシップがほぼ壊滅的だったことに気付くことが可能になった。

 2008年の金融危機後に続いたユーロ圏危機への誤った対応と、中東からの移民に対する開放政策は、彼女が維持しているとされた極右政党に対する防火壁の崩壊に拍車をかけた。さらに悪いことに、彼女は見識ある環境保護主義者の立場から、自国の産業空洞化とロシア産石油・ガスへの依存を許容した。そしてウラジーミル・プーチンがウクライナに侵攻するや、メルケルが残したものは、「トランプの米国」の強力な代替案ではなく、東方の権威主義的なライバルに脅かされ、依存する脆弱な欧州の中核にすぎないことが明らかになった。

カーニーの演説とメルケル時代の教訓

 スイスのダボス会議での演説で、米国主導の秩序からの部分的な独立を宣言し、脚光を浴びるカナダ首相のマーク・カーニーを見て、私はメルケル時代の教訓を思い起こした。

 この演説には称賛すべき点が多くあった。カーニーの言葉には、ほとんどの政治家が今日、頼る陳腐な決まり文句が驚くほどなかった。彼はいくつかの重要な真実を語り、特にリベラルな国際秩序というものが、理想主義だけでなく、常に権力と自己利益によっても形作られてきたことを強調した。トランプの最近の権力への復帰を冷戦後の秩序の「断絶」の一部と捉え、大国間の競争をこの時代の重要な特徴として強調した点も妥当だ。

 そして、カナダのようなミドルパワー(中堅国)は伝統的な米国との同盟に縛られる必要はないという、米国に対して隠そうとしないその牽制(けんせい)は、トランプが私たちの北の隣国に強いた数々の不条理を思えば、理解できる反応だ。たとえば「51番目の州」というからかい(もちろん、カナダがいつか米国に加わるなら少なくとも10州は増えるだろうが)、過剰な貿易戦争、そしてグリーンランド買収計画などが挙げられる。

米国からの独立と中国への従属という二者択一

 しかし、メルケルの場合と同様、カーニーが描く世界秩序のビジョンがどこに行き着くのか、その論理を考察する価値はある。確かに、中堅国たちは連携して大国に対抗することはできる。だが、重要な分野では、新たな世界秩序は真の意味での多極化ではないし、中堅国たちが一つになって行動する準備ができているわけでもない。むしろ、彼らが米国からの独立を主張すればするほど、中国への従属のリスクが増すという二者択一に直面することが多いのだ。

 たとえば軍事分野では、欧州とカナダは、理論上は再軍備し、トランプ主義的米国と、中国・ロシアの「準同盟」の間で何らかの第3勢力を形成できるほどに豊かではある。しかし現実には、過去の経緯に縛られる経路依存性と、高齢化という強力な力が働いている。米国との同盟からの離脱は技術的に非常に難しく、福祉国家が高齢化社会に対応する中で軍事費を増やすことは、政治的に困難をきわめる。軍事費を増強せずに米国との同盟から離脱すれば、ほとんどのシナリオにおいて、モスクワと北京との融和を深める結果につながる。

 AI(人工知能)の領域では、その選択はさらに鮮明だ。米国の企業と中国の競合企業が技術の最前線を支配しており、AIの基盤が米国のオタク王たちか共産党の科学官僚のどちらかによって構築されない未来を想像するのは、とても難しい。どちらのAIの未来も我々の滅亡につながる可能性はある。だが、第三の非同盟的なAIの道など存在せず、カナダがそれを見つけ出すとも思えない。

米国から離れて向かう目的地 そこで待ち構えるものは

 最後に、そして最も論争を呼ぶ点として、私はこの「米国でなければ中国」という論理が、政治的秩序にも同様に当てはまると見ている。トランプ的状況下の米国はポピュリズムが権力を得ることを許し、混乱と権威主義的な振る舞いを招いた。それに対して嫌悪感を抱くのは当然だが、それが自由な政治状況下で、民主的なメカニズムを通じて起こったことを認識するべきだ。

 一方、欧州やカナダがポピュリズムを抑制しようとしてきた手法には、言論への厳しい規制やエリート層の結託など、管理的な非自由主義の側面が含まれている。そして、中国の独裁体制とは、まさにその管理的な非自由主義が完全に開花したものではないだろうか?欧州のエリートたちが、激しく揺れ動く米国よりも中国の方が潜在的に安定したパートナーになり得ると語り、その環境保護目標やテクノクラート(技術官僚)的な能力を称賛するときに、彼らはトランプ流ポピュリズムに対するリベラルな代替案を擁護しているのではない。中国の磁力に引き寄せられ、自らの民主主義の伝統から引き離されているのだ。

 あるいは、こう反論する人もいるかも知れない。トランプ自身によってそちらの方向に追いやられているのだと。世界の指導者たちも血の通った人間だ。米国大統領が、無分別な真実を語るだけでなく、彼らを侮辱し、脅しているようなときに、米国への信頼を持ち続けるように要求するのは酷な話だ。

 だからこそ、私は今でも米国の未来に賭けてはいるが、カーニーや他の指導者たちに、単に「米国を信じ続けてほしい」と言うつもりはない。ただ、米国から離れる一歩一歩がどのような目的地につながり、どのような勢力が待ち構えているかを照らし合わせ、よく考えてほしいだけなのだ。

米国政治を動かす福音派とは何か 宗教学者の加藤喜之さんに聞く(朝日新聞)

 「米国を再び偉大にする」と唱えるトランプ氏が2度目の米大統領に就任して1年がたった。中東でイスラエルを一貫して支持し、国内では強引な移民取り締まりを進める。支持基盤として注目されているのが、キリスト教福音派だ。彼らはなぜトランプ氏を支持するのか。福音派の教会に通っていたこともあるという宗教学者の加藤喜之・立教大教授(46)に聞いた。

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 福音派は、救い主イエスの再臨を意味するギリシャ語「良い知らせ(エウアンゲリオン)」に由来する。もともとはプロテスタントを一般的に指す呼称だった。加藤さんは「米国の福音派」について、1970年代から政治勢力として台頭し、複数の教団、教会、個人からなる宗派の壁を超えた運動と規定する。米国民の4人に1人を占める彼らは、中絶や同性婚に反対し、60年代以降の米国社会が進めてきた多様性を重視するリベラリズムを文明的な衰退とみて徹底的に批判する。国家とキリスト教を密接に関係づけようとする動きは、キリスト教ナショナリズムと呼ばれる。

 「彼らは、家族を中心とした伝統的な西洋文明を再度復活させようと考えている。福音派と保守的なカトリックを含め、キリスト教ナショナリズムが高まりを見せている」

 トランプ氏の中東政策にも福音派の考えが影を落としているとみる。イスラエルの地は、終末論においてイエスが再臨する場所だ。米国民全体の約4割が世界は終わりつつあると信じており、福音派では6割を超えるという。聖書を「神の言葉」として絶対視する福音派の人々は、創世記12章にある「イスラエルを祝福するものは神に祝福される」という趣旨の文言を文字通り受け止めているという。

 イランに対して、米国が再度の武力行使をちらつかせていることも、福音派からは、終末に向かう世界における善と悪の戦いとして理解される。イランからイスラエルを守ることがキリスト教徒の使命だとみるからだ。「彼らは国際法や国連、パレスチナ人の状況には関心がない。大事なのは、聖書に基づいて、神が誰にこの土地を与えたのか。イスラエルを守ることが米国の祝福につながると考えています」

 ナチス・ドイツによるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を起こしてしまった道義的責任がキリスト教にもあるという立場からイスラエルを支援する主流派のキリスト教シオニズムとは異なるものだ。

 大都市ニューヨークで不動産業者として成功し、性的には放縦、人種差別的な発言も辞さないトランプ氏自身は福音派とはいえない。架け橋となったのが、福音派の女性牧師ポーラ・ホワイト氏(59)だ。第1次政権の就任式では女性聖職者として初めて祈禱した。トランプ氏が昨年2月に設立したホワイトハウス信仰局の上級顧問を務める。日本政府による宗教法人・世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令請求を批判していることでも知られる。

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2025年5月1日、米ホワイトハウスで開かれた「国家祈りの日」の行事に参加するホワイトハウス信仰局の上級顧問ポーラ・ホワイト氏(中央)とトランプ大統領

 加藤さんが注目するのは、ホワイト氏が属する新たな宗教運動「新使徒運動」が唱える「繁栄の福音」だ。

 「神を信じるものは、物質的な祝福を受けるという考え方です。逆に言えば、物質的な祝福を受けているトランプは神に祝福されていることになる」

 「偽りの教え」として批判される考えだが、同運動は、製造業が衰退したラストベルト(さび付いた工業地帯)の労働者や、2008年のリーマン・ショックで経済的に打撃を受けた下層中流に信者を広げる。ホワイト氏らが彼らの鬱屈した不満を宗教的なネットワークですくい取り、大統領選で草の根のトランプ支持につなげたとみる。

 福音派の影響力は司法にも及ぶ。トランプ氏は1期目の任期中に最高裁判事に中絶反対の保守派3人を指名した。この任命は、トランプ氏の独裁的な政治手法にも影響を及ぼしているとみる。保守派判事が属する法曹団体「フェデラリスト・ソサエティー」は、大統領が全ての行政権(執行権)を統制すべきだとする単一執行権理論を強く支持しているからだ。

 今年11月の中間選挙に向けた世論調査では、連邦下院選の投票予想で、野党民主党候補の支持率が48%と共和党候補(42%)を上回る。「民主党が下院で過半数を握り、大統領への弾劾訴追、上院での弾劾裁判へと向かった場合、単一執行権理論を掲げる大統領と議会との対立が深まるだろう。21年1月の米議会襲撃事件の状況を上回り、内戦のような状況が起こりかねない」とみる。

 加藤さんは出身地名古屋市の私立中高で受けた聖書の授業でキリスト教に関心を持った。16歳で米国に留学し、帰国せずにテキサス州の大学に進んだ。友人が通っていた福音派教会に通い、保守的なキリスト教思想に傾倒していた時期もあるという。「宗教自体は善にも悪にもなりうる存在。聖書は非常に興味深い内容だが、宗教学を学び、内容の変遷を見れば、すべてを絶対視することは難しい。学者、研究者として理性的に判断したいと思います」

かとう・よしゆき 高校時代に米国に留学し、プリンストン神学大学院で博士号取得。25年に「福音派-終末論に引き裂かれるアメリカ社会」(中公新書)を出版。専門は思想史、宗教学。 

参政党から高市氏にネタ変更 選挙で稼ぐYouTuber、思わぬ暗転(朝日新聞)

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政治系YouTube投稿者の男性が、収益や視聴者層を確認するパソコン画面=2026年1月29日午後4時18分

 衆院選の投開票が近づく中、ネット上には政治系の動画があふれる。中には真偽不明な内容や扇情的な言葉も目立つ。どんな人が動画を作っているのか。動画チャンネルを立ち上げ、月90万円近い収入を得たこともあるという男性がその一端を語った。

 「稼げなかったら、やっていませんよ」

 匿名の政治系YouTubeチャンネルで生計を立てる東京都日野市の男性(39)は淡々と語った。

参院選は「チャンス」 応援チャンネル立ち上げ

 投稿を始めたのは昨年5月。自身も支持する参政党の応援チャンネルを立て続けに、二つ立ち上げた。参政党の人気の高まりを感じ、7月の参院選が「チャンス」と考えた。

 写真やAI(人工知能)の音声を使い、「有名企業が支持を表明した」「特定の記者の取材を拒否した」といった内容の3~10分の動画を、毎日投稿した。数十万回再生される動画が相次いだ。

 すぐに広告収入が入り、参院選を挟んだ3カ月の収益は約220万円に上った。「選挙期間は注目度も高いし、ネタにも困らない。稼ぎ時ですね」と振り返る。

再生数は2億7千万回→17億4千万回

 政治系動画の存在感は年々増している。選挙・政治情報サイト「選挙ドットコム」によると、政治系YouTubeの再生回数は2024年10月の衆院選時は2億7千万回だったが、昨年の参院選は17億4千万回に増えた。

 男性は小学生の子ども2人と会社員の妻と暮らす。西日本の政令指定都市の市役所職員だったが、自由な時間と収入増を求めて6年前に退職。ネットビジネスのコンサル業などを試したが振るわず、借金を背負った。その中で手を伸ばしたのが、政治系動画だった。

「高市さん、熱い」 次は首相の動画作り

 しかし、参院選が終わり、しばらくすると、再生数が伸び悩んだ。運営する二つのチャンネルのうち、一つは毎月10万~30万円の広告収入が続いたが、もう一つは、数万円に落ち込んだ。

 そこで注目したのが、高市早苗首相だった。下がらない内閣支持率に、どこかで見かけた「選挙が近い」との情報。

 「高市さん、熱い」。稼げると踏み、昨年12月にチャンネルを立ち上げた。「やはりお金が第一目的。保守なので、高市さんも悪くはないかな」と思った。

 男性は自民党を支持していない。高市首相は「責任ある積極財政」や、旧姓の通称使用拡大なども打ち出す。しかし、男性は「政策はあまり詳しくは知りません」と明かす。

 動画には、手早く、刺激的にといった、参政党の応援チャンネルで学んだ「コツ」を盛り込んだ。

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スマホにあるユーチューブのアプリケーション

正確性に危うさ、「事実確認おろそかに」

 動画のネタは、X(旧ツイッター)やYouTubeで「バズっている(よく見られている)」で探す。生成AIにネタの内容やSNSでの反応などを読み込ませて、ニュース風の動画の台本をつくるよう指示。自身で修正、加筆し、AI音声に読み上げさせる。「著作権違反かもしれない」が、ネット上で「拾った」写真をあてはめる。3分の動画なら、早ければ30分ほどで完成する。

 サムネイル(表紙画像)やタイトルには、「売国議員を駆除へww」「マスコミ敗北w」などと扇情的な言葉を並べた。

 視聴者のコメントで人気を集めるのは、「国賊議員を落選させろ!」「掃きだめのテレビ局」といった中傷とも受け取れる言葉。男性は「動画は、『自分に都合のいい考えを聞きたい、特定の人をバカにしてスカッとしたい』という視聴者のニーズに合わせているだけ。中立の解説は見られない」と語る。すでに20万回再生された動画もある。

育てたチャンネル 200万円で売買契約

 一方で、明確な危うさもはらむ。男性が1月中旬に投稿した動画は、高市首相が今回の衆院選で自民党の特定の議員を「非公認にしようとしている」とする内容だった。数万回再生され、「高市に感謝」「これだけで選挙の大義」といったコメントが約300件寄せられた。

 しかし、自民党は同じ日に、これらの議員の公認を発表していた。

 男性に情報の根拠を尋ねると、「バズっている他の動画をまねて、表現を変えて投稿する時もあるので、情報の正確性は批判されてもしょうがない。目の前の利益と作業時間を考えたら、事実確認もおろそかになってしまう」と語った。

 次に男性が目を付けたのが、チャンネルの売却による収益化だ。「十分稼いだし、毎日投稿し続けるのも面倒になった」。更新を続けてきた、参政党を応援する二つのチャンネルを売ることにした。

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政治系YouTube投稿者の男性が売りに出した参政党の応援チャンネルには、170万円の買値がついた=2026年1月29日午後4時15分、東京都内、平川仁撮影

 1月にアカウント売買を仲介するサイトに掲載すると、翌日には問い合わせがあった。1週間で、二つ合わせて約200万円の売買契約が成立した。

 「YouTubeは、はやり廃りが激しく、同じチャンネルで稼ぎ続けられる保証はない。伸びている時に売った方がいい」と話す。

YouTubeチャンネルの販売 規約で禁止

 チャンネルの販売は、YouTubeの利用規約で禁止されているが、男性は規約違反を「知らなかった」という。

 この仲介サイトで、昨年7月の参院選から今年1月までの7カ月間に、売買が成立したYouTubeの政治系チャンネルは36件。実際の売却価格は非公開だが、売り手の希望価格の平均は100万円を超え、最高額は1千万円近くだった。

 だが、衆院選が公示された後の1月末、男性に思わぬ事態が起きた。YouTubeから売却予定の二つのチャンネルの広告収益を停止すると通知された。「関連チャンネルが原因」とだけ伝えられ、明確な理由は分からない。

 チャンネルは売り物にならなくなり、手に入るはずだった約200万円も泡と消えた。高市首相のチャンネルも収益を止められる恐れがあり、いまは投稿していない。

 収入はなくなったが、男性は今後もYouTuberを続けるつもりだ。「手痛いですね。稼げるチャンネルを、また始めないと」。政治系も含め、すでに次のジャンルを考え始めている。新たな収益源を求めて。

政治サイト編集長「選挙中の収益化、議論を」

 YouTubeでの政治系動画をAI(人工知能)で分析する政治情報サイト「選挙ドットコム」の鈴木邦和編集長は「選挙期間中の収益化については、今後議論していく必要がある」と語る。

 選挙ドットコムの調査によると、2025年7月の参院選の期間中に投稿された政治系動画の再生数は約17億回。うち約9割が、政党や政治家ではない「第三者」が配信する動画だった。演説やニュース、新聞報道を切り取って短くまとめた「切り抜き型」が約4割を占め、鈴木編集長は「支持政党の考えを広めたいといった純粋な応援目的のチャンネルもあると思うが、収益目的も少なくないだろう」とみる。
 また、再生数に応じて、広告収入を得る現状の仕組みでは、情報の正確性よりも再生数が重視される場合もあるという。特定の思想を持つ視聴者が多ければ、その層が好む動画が多く作成される傾向もあり、鈴木編集長は「視聴者のリテラシーの向上も必要だ」と指摘する。 

中国軍制服組トップも「例外なき粛正」 習氏「一強」世代交代狙う?(朝日新聞)

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2025年12月に中国・北京であった中国軍の上将昇進式で記念撮影する習近平国家主席(前列左から2人目)と軍制服組トップの張又俠・中央軍事委員会副主席(同3人目)、劉振立・同委員会委員(同4人目)

 中国軍で相次ぐ高官の失脚は、ついに制服組トップの張又俠・中央軍事委員会副主席に及び、習近平国家主席の3期目で最大の政治事件に発展した。例外なき粛正によって、習氏の「一強」を印象づけるとともに、来秋の中国共産党大会を見据えて軍高官の世代交代を図ろうとしているとみられる。

 張氏は中央軍事委員会で習氏に次ぐ立場にある。中国国防省が24日に重大な規律違反の疑いで調査すると発表した劉振立・同委員(連合参謀部参謀長)とともに、20日に習氏が演説した党の学習会に姿がなく、動静が注目されていた。

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中国軍の張又俠・中央軍事委員会副主席=2025年3月、北京の人民大会堂

 ただ、北京の外交筋の間では張氏が失脚したと見なすことに慎重な声もあった。2017年に中央軍事委員会副主席に就任した張氏は、22年10月に発足した習氏の3期目で、習氏本人や外交部門トップの王毅氏と並び、党の慣例上の定年を超えて続投された、現体制の支柱とも言える存在だった。

現役将軍で「数少ない実戦経験者」

 香港紙・星島日報も24日、張氏について習氏と同様、革命世代の高官を父祖に持つ「紅二代」と紹介。「中越戦争に2度参加し、顕著な戦績を収めた。中国現役将軍の中で数少ない実戦経験者だ」と特別な存在であることを伝えた。

 中央軍事委では23年10月、李尚福・前国防相が巨額の贈収賄に関与した疑いで失脚。昨年10月に制服組ナンバー2の何衛東・同委副主席ら軍高官9人が巨額の汚職事件に絡み、党籍剝奪などの処分を受けた際は、東シナ海や台湾方面を担当する東部戦区の経験者が多く、瀋陽軍区司令官で系統の違うとみられた張氏は影響力を強めたという見方すらあった。

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中国軍の劉振立・中央軍事委員会委員=2025年3月、北京の人民大会堂

 張氏と劉氏が失脚すると、習氏の3期目に7人で発足した中央軍事委員会は習氏を含め2人になり、党中央政治局員に軍人がいなくなるという異例の事態になる。北京の軍事筋では「作戦を指揮する軍人がいないと、大規模な作戦が難しくなる」という見方も出ている。

 そのような異例の事態を迎えてでも習氏が進めようとしているとみられるのが、軍高官の世代交代だ。立ち上げ当初の習指導部を支えた「紅二代」は3期目で影響力が薄まった。軍でも張氏の失脚により、軍に対する党の指導が強まり、習氏の「一強」がより堅固になるとみられる。

 大東文化大学東洋研究所の鈴木隆教授は、習氏が来秋の党大会の人事を念頭に置いていると指摘。「腐敗した旧軍人層を一掃して、忠誠心や作戦能力などの面で、より習氏の理念や目標に親しんだ新世代に交代させようとしている。高齢の張氏の退出は、その象徴と言える」と分析した。

防衛研究所・五十嵐隆幸専門研究員の話

 習近平国家主席が、軍という最大の暴力装置を掌握するために、軍内の実力者である張又俠・中央軍事委員会副主席と劉振立・同委員会委員(連合参謀部参謀長)の2人を失脚させたとも考えられる。

 中国共産党政治局から唯一の軍人だった張又俠氏がいなくなることで、軍のプロの意見が習指導部に反映されづらくなることは否めない。しかし習氏にとって、中央軍事委に残った張昇民副主席という信頼できる政治将校が軍をおさえていることによる安心感の方が、重要なのかもしれない。

 ただ、張昇民氏は、部隊指揮の経験がほとんどない。習指導部が軍の能力や安全保障環境の現状を正しく認識できなくなる可能性がある。

 張又俠氏と劉振立氏は、中越戦争という負け戦を経験した最後の世代でもある。張又俠氏はかねて習氏に、現状の軍の能力では「台湾有事」を遂行できる能力はまだ備わっていないと進言し、それが2人の不仲にもつながっているという説がささやかれている。

 張又俠氏が失脚したことで、台湾有事だけでなく、日本を含む周辺国との一触即発の事態をきっかけに習指導部が暴走したとしても、ストップをかけられる存在がいなくなる。とても危ない状況だ。

ウクライナを守るために、私たちがたたかう価値とは(N.Y.Times)

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ブレット・スティーブンス

 ウクライナの汚職スキャンダルにおいて特筆すべきは、それが単なる日常茶飯事ではなく、きちんと「スキャンダル」として認識されている点だ。

 先月、独立機関である国家反汚職局(NABU)が主導した調査で、閣僚2人を含むゼレンスキー大統領の側近が1億ドル規模の収賄と詐欺に関与したとして、告発された。閣僚は辞任し、大統領府長官も解任され、ゼレンスキー氏の元ビジネスパートナーは国外逃亡したようだ。大統領自身は不正行為で告発されていないが、政治的ダメージは受けている。

 政治的腐敗こそがウクライナの恒常的な問題だった。今回の捜査とそれに伴う法的・政治的責任追及は正しい道だ。国の存亡をかけて戦いながらも、指導者を調査できる国家こそ、守る価値がある。

「28項目」の背景にある恐ろしい考え

 これはトランプ政権の「いかなる代償を払っても平和を求める」一派に属さない、すべての人たちを励ます考えだ。

 一派の中心人物であるウィトコフ氏とクシュナー氏は2日、モスクワでプーチン大統領との個人的な会談に臨んだ。この2人の不動産開発業者は、プーチン氏側の対米交渉窓口キリル・ドミトリエフ氏と共に、マイアミで28項目の計画を立案した人物だ。これはウクライナにとって降伏文書に等しく、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が報じたように、その背景にある考えは、さらに恐ろしいものだった。

 「クレムリンにとってマイアミ会談は、トランプ政権発足前から練られていた戦略の集大成だった。それは、従来の米国の国家安全保障体制を迂回(うかい)し、米政権にロシアを軍事的脅威ではなく、豊かな機会のある土地として認識させる戦略だ」と同紙は指摘する。「数十億ドル規模のレアアース(希土類)やエネルギーの取引をちらつかせることで、モスクワは欧州の経済地図を塗りかえ、米国と伝統的な同盟国との間にくさびを打ち込める可能性がある」

 この考え方の何が問題なのか。(元英首相の)ウィンストン・チャーチルのロシア評「謎の中にあって、謎に包まれた謎」という言葉を借りるなら、ビジネスを通じた平和という概念は、「自己破壊の中にあって、自己欺瞞に包まれた自己取引」だ。

 歴史は、この概念を否定している。第1次世界大戦前夜、英国とドイツは主要な貿易相手国だった。中国と西側諸国の経済関係は、北京がより強硬になるにつれ強化されてきた。プーチン政権下のロシアとの経験も、そうだ。クレムリンが海外からの投資を歓迎していたとされる時代、ロシアでビジネスを行った西側の企業は次々と痛い目を見た。

 そして、常識もこの概念を否定している。もしプーチン氏がロシアと西側の平和と繁栄に関心を持っていたら、四半世紀にわたって権力の座にある間に、その両方を追求していたはずだ。しかし、彼は共存を望んでいない。ロシア軍がこれまでに100万人の犠牲を出したと報じられても、彼が望んでいるのは支配だ。彼のロールモデルはビル・ゲイツやコンラート・アデナウアーではない。ピョートル大帝とイワン雷帝なのだ。

 これは今後も変わらないだろう。73歳のプーチン氏は、自らを世界史に残る人物ととらえ、弱く、虚栄心が強く、腐敗していると軽蔑する敵に対し、自分の思い通りに物事を進めてきた。ドナルド・トランプ大統領は2人のディベロッパーを交渉のために派遣することで、プーチン氏の態度を単に認めただけだ。

「パックス・アメリカーナ」 近づく終焉 その後の世界は

 今重大な危機は、プーチン氏がトランプ氏の支持するなんらかの「和平案」に条件つきで同意し、キーウに耐え難いほどの外交的圧力をかけ、受け入れを迫ることだ。これはウクライナの政治を分裂させ、北大西洋条約機構(NATO)を分裂させ、ロシア経済を救済し、欧州政治における親ロシア派の声を強め、ロシアに軍事力を回復するための時間を与えることになるだろう。

 代わりにウクライナは1994年に核兵器を放棄した時と同様、紙切れのような安全保障の約束を得るだけだろう。軍縮が平和への道であると同時に、戦争への道でもあることを改めて思い知らされる。

 マルコ・ルビオ国務長官に聞きたい。2029年、彼が民間人になり、J・Dバンス副大統領が大統領になり、プーチン氏が再びウクライナの一角を渇望したとき、米国のキーウに対する安全保障はどれほど有効なのか、と。

 プーチン氏が手札を出し過ぎて、トランプ氏に「ロシアは我々を翻弄している」という5月の発言のような印象を与え、ウクライナ防衛に対する意欲を再び呼び覚ます可能性は常にある。それは正しい行動であるだけでなく、米政権がトランプ氏のファミリーと友人たちの利益になるビジネスチャンスのために台湾の独立性を放棄することはないというメッセージを中国に示すことにもなるだろう。

 ゼレンスキー氏と欧州に残る支持者らは、それを当てにはできない。彼らは間もなく、一時的な平和をつかむか、過酷な戦争を耐え続けるかの恐ろしい選択を迫られるだろう。安全なニューヨークからコラムを書く者が助言する立場ではないが、チャーチルの別の言葉をここで参照したい。「戦って倒れた国は再び立ち上がったが、おとなしく降伏した国は終わりを告げた」

 ここでのより大きな警告は、世界中の自由な国家、特に欧州に向けられている。「パックス・アメリカーナ(アメリカによる平和)」は間もなく幕を閉じようとしているかもしれない。その後は、どの地域も、どの国も、勢いづいて貪欲になった敵に対し、自力で立ちむかう時代となる。どう戦うべきかを知るにはウクライナの人たちを見れば十分だ。彼らを見捨てることは、私たちにとって極めて危険で私たちの恥となるだろう。 
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